カイン×ティナ
2012/11/07 22:20
「カイン」
「何だ」
一度目。
「カイン」
「どうした」
二度目。
「カイン」
「ティナ」
三度目。ようやくこちらを向いて、あきれた声で名前を呼んでくれる。
カインの低い声で呼ばれる自分の名前が、ティナはこの世でいちばんお気に入りだ。
「ねえ、好きだよ」
目線をあわせてくれた彼にいつもの言葉。
「そうか」
ありがとう、と顔色も変えずに頭をぐしゃぐしゃ撫でられてそれで終わり。お決まりのパターン。
普段子ども扱いされてるとは思わないし、それで拗ねる気も無いのだが、恋人として少し悲しくは、ある。
それでも毎日毎日飽きずに同じことを繰り返すのは、撫でてくれる骨ばった大きな手も大好きだから。
とどのつまり、カインが好きすぎるのだ。
「ねえ、好きだよ」
そんな日常を今日も今日とて期待する。髪をかき混ぜる優しい手を期待する。
「俺もだ」
いつもと違う同意を示す言葉。
撫でられるのを待機して少しうつむいていた顔を上向かせられ、くちびるに感じた柔らかい熱。
近い、近すぎる、カインの顔。
…あれ?
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