ティナ×カイン
2012/11/07 22:20


細い手を掴んで引き上げれば、彼女は少し怯えたように瞳を震わせた。
肩を抱いて微笑むと、ティナは少しだけ肩の力を緩めてくれる。
高く跳べば跳ぶほど、彼女はもっととねだった。
月の近くに行きたい。
そう願う彼女の望みを、少しでも叶えてやりたいと思う。

「ねぇ、カイン」

トンと地上に脚をつけたとき、ティナがためらいがちに呟いた。
言い淀んでいるところに頷いてやれば、彼女はぽつりと言う。

「高い所が好きなの」

だから、月へ。
今にも泣きそうなくらいに顔を歪めて言うものだから、カインはぐっと息をのんだ。
彼女のこの表情には弱いのかもしれない。
苦笑してカインはゆっくりと、しかし確かに頷いてやる。

「月が好きなのか?」
「…ええ」

跳躍する瞬間に問いかける。
返答は期待していなかったが、彼女はしっかりと頷いてくれた。

高く高くと望むのはなんとなくわかるような気がする。
翻るマントを掴む彼女の手は少しだけ震えていて、心配いらないとその手を握った。

「月は、あなたに似ているわ」
「俺に?」

だから、もっと近づきたいの。
ぱちりと青い眼が瞬く。
人形の用だと感じたそれは今はもう人のそれで、カインはもう一度息をのんだ。

「すきよ、カイン」

あなたに近づきたいの。




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