セシル×ティナ
2012/11/07 22:21
人目も気にせずしゃくりあげる姿に正直、少し驚いた。時折漏れる嗚咽が悲しくて、痛々しい。
ティナは気丈な子だ。好き嫌いなくよく食べるし戦う理由を見つけてからは自身の力に怯えている様子もこれといって見られない。
出会ったばかりの危なっかしげな雰囲気はすっかり影をひそめている。
もともと芯の通ったしっかり者なのだろう。最近ではこちらが元気づけられることも多い。
何もティナに限ったことではなく、秩序に召喚された戦士、自分達から見ればまだまだ子供のような何人かも含めて全員に言えることなのだが。
それがいま、声をあげて泣いている。
隣にしゃがみこんだのがセシルだと気づいても、一向に泣きやむ気配はない。
どこかで何かが弾けてしまったのだろう。ずっとためこんで、無理して我慢してきた何かが。処理できなくなってしまって、どこかのネジがひとつでもゆるんでしまえば、もう溢れ出すのを止められなくて、自分ひとりじゃどうにもできなくて、何がなんだか分からなくなっちゃって。
キャパシティーオーバー。まだ自分の扱い方がよく分からなくて、ついつい使いすぎてしまうのだ。セシル自身も数年前、ちょうどおとなとこどもの境目の時期に、似たような経験をしたことがあるから、なんとなく今のティナの心中を察することができる。
「大人になるってそういうことなんだね、きっと」
だからせめて、自分しか見てないいまのうちにたくさん、たくさん泣けばいい。
空っぽになったらまたゆっくり自分と向き合える余裕が生まれるから。
包み込んだ腕の間からすすり泣きの音が聞こえなくなるまで、セシルはただ黙ってティナの傍にいた。
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