WOL×ヴァン
2012/10/28 20:23
光の戦士は困っていた。
「ほら、今度はあっちに行ってみようぜ」
ぐいっと急に向きを変えられ足がもたつく。ヴァンはそんなことには頓着しないので、腕を引っ張られたままよたよたと情けない格好で歩かなくてはならない。
聖域近辺の哨戒という任務がまだ終わっていない。そう言っても「たまにはいいだろ」と取り合ってくれない。この「たまに」が今日で三日続いているので、光の戦士の内心は眉の下がった表情以上に困惑している。
しかし、光の戦士を最も翻弄しているのはヴァンではなかった。
「なんでだろ、あんたといると楽しい」
あまり見ることのない、ヴァンの全開の笑顔。
「行こうぜ」
「……、ああ」
光の戦士を困らせるもの。
それは、駄目だとわかっていてもヴァンの笑顔に何故か頷いてしまう、己自身だった。
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