ヴァン×WOL
2012/10/28 20:23
title:瞳の中
その空間の名は、天象の鎖と言った。
彼はいつも、その空を見上げていた。
「おい、また此処にいたのか」
ヴァンが声を掛けると、彼はこちらに顔を向けた。
その顔は、やはり何処か険しい無表情。
それを苦手とする者もいる様だが、ヴァンは抵抗がなかった。もしかしたら、元の世界にそんな生真面目で無愛想な知り合いがいたのかもしれない。
「此処に居る事多いよな」
隣に立ち、後頭部に両手を持って行きながら訊ねる。
「ああ」
そう短く返事を返して、ウォーリアはまた空を見上げる。
「……………」
ヴァンはそんな彼を見る。そしてふと思った。
「お前の眼、」
思った事はそのまま口から出て言葉となる。
「今、星の輝きがそのまま映ってキラキラしてる」
「そうか?」
ウォーリアはこちらを一瞥してから言う。
「ああ……お前の瞳の色、青色だから…青空に星が瞬いているみたいに見える」
「快晴の空に星が輝く事はないのでは?」
「そうだけどさ、実際そんな景色があったら今のお前の瞳みたいに見えるんだろうなぁ……あ、だけどこの世界ならそんな景色が見れる場所もありそうだ」
この世界には天空に浮かぶ城や月面に行ける空間があるのだ、どんな空間があってもおかしくはない。
「もしそんな空間があるなら、飛んでみたいなぁ…」
「いつも話している、飛空艇とやらでか?」
「ああ。絶対綺麗な景色だと思う。だって、」
そしてヴァンは彼を見つめる表情を満面の笑みに変え、
「お前の眼も今、ずっと見つめていたいくらい綺麗だから」
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