フリオニール×ヴァン
2012/10/28 20:16



「フリオニールってさ、この花好きだよな」
 振り返ると、ヴァンが『のばら』をつまんでしげしげと眺めていた。咄嗟に腰元を探るが、当然そこには何もない。
「こら、手癖が悪いぞ」
「スキだらけだったから、つい」
「つい、じゃない」
 取り返そうと手を伸ばすも、ヴァンはヒョイとかわして『のばら』とフリオニールを交互に見る。
「全然、似合わないな」
「……悪かったな、似合わなくて」
 引ったくるように取り戻した『のばら』を丁寧にしまう。ヴァンは「ふーん」と頭の後ろで腕を組みながらその様子を見ていた。
「ほんとに大事なんだな」
「お前は、花は好きじゃないのか?」
「赤いのは嫌いだけど、フリオニールが好きなら、好きだ」
「なんだそれは」
 呆れながらヴァンの方へ向き直り、フリオニールは面食らった。視線の先でヴァンが思いの外真面目な、そして寂しげな顔をしていたので。
 思えば、さっきからヴァンは一度も、笑っていない。

「――まあ、嫌いじゃないならいいさ」
「……ん」
 ぽん、とフリオニールが優しく砂色の頭を叩くとヴァンは漸く、ほんの少しだけ笑った。




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