皇帝×ヴァン
2012/10/28 20:15
「傍にいてやるよ」
薄汚い子供は傲然とそう言い放った。
力も知性も品位も、全てにおいて劣っているのに何故そうも不遜でいられるのか。そもそも絶対的な支配者の庇護下になければ生きてゆけぬ、矮小な民の分際で王に指図するなどどうしてできると思える。生殺与奪すら王が定めてやらねばならぬというに。怒りを通り越して呆れてしまう。
「馬鹿だなあ」
子供は不敬に更に不敬を積み重ねる。
「オレたちは王サマなんていなくても生きていける。でもおまえは、オレたちがいなきゃ存在できないんだぞ?」
亡国に死すは民ではなく、王なのだと。
「勘違いすんなよ」
選ぶのは、オレだ。
打ち据えようと振り上げた杖をあっさり掴み、子供は無邪気に笑って王の喉に噛みついた。
prev | next