オニオンナイト×ヴァン
2012/10/28 20:13
どうか、どうか。
僕はとても賢いから、兄貴面するこの男のことなんてとっくに理解してる。理屈なんて気にしないで、頭じゃなくて感覚で生きている。呆れるくらい楽観的だし、妙に自信家な上に緊張感がまるでない。僕がしっかり見てなきゃ危なっかしくてしょうがない、そんなやつなんだ。
「お願い、お願いだから……!」
さっきから僕は、何に縋ろうとしているんだろう。
神様?
でも、コスモスが僕らをそんな都合良く助けてはくれないことは、わかってる。
血の気の失せた頬に自分の手を擦り付ける。いつもは日に焼けた健康的な肌が、こんなに色を無くしてしまえるなんて。
僕は知っていたんだ。考えなしのくせに、一度言ったことは絶対実行すること。「おまえを守る」という言葉に一切の冗談も嘘もないこと。
誓いを果たしたヴァンは満足そうに笑っていた。瞳は相変わらず優しさで透き通っている。壊れてしまった身体を抱きしめることも、疲れた瞼を撫でることもできない、小さすぎる掌。ただ震えるだけのこんな両手すら、ヴァンは許してしまう。知っていながら、涙を堪えることしかできない僕を、ヴァンは許してしまうんだ。
ゆるさないで。そう乞う愚かな僕を慈しむ掌は、哀しいくらい大きかった。
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