ヴァン×暗闇の雲
2012/10/28 20:11
12"
空にあるものはなんだって好きだ。星も、風も、月も、太陽も、もちろん、雲も。
だから手を伸ばすと、案外、あっさり、暗闇の雲はヴァンの腕に収まってくれた。いや、大きいから、はみ出てはいるのだけれど。
「雲ってさぁ、どんな生き物なの?」
ヴァンは心臓の音を探そうと、彼女の胸に耳を当てる。
が、求めるものは聞こえてこない。
雲はヴァンの頭を撫でる。
「さて、なんであろうな。生き物だろうか」
「違うのか」
ヴァンはうーん、と、雲の胸の上で考える。
「風が吹く理由とか、空が青い理由とか、そういう、感じか?」
「そういうかんじってやつやもしれんな」
何か考察した様子もなく、暗闇の雲はヴァンを肯定する。彼女自身はそんなものには興味がないのだろう。
ヴァンには満足だ。
「それってやっぱり、俺にぴったりだろ。お前は、俺の空なんだ」
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