アルティミシア×ガーランド
2012/10/24 22:00


大人の特権


芳しい葡萄酒の香りが室内を満たす。度数が低いとはいえ、容量を誤れば毒にもなるだろう。
そう思い、傾け続ける瓶を取り上げてから数分が経とうとしていた。
ワイングラスに注がれた液体は残り僅か。
夢うつつのアルティミシアはその事に気付かず、膝を占拠されているガーランドとしてはこのまま眠ってくれる事を祈るばかりだ。
長く艶やかな爪が、つつ、ガーランドの頬を撫でる。

「ねぇ、貴方は鏡よ。いいかしら?」

酔っぱらいの戯言に付き合う気の無いガーランドは酒瓶を口許へ運ぶ。
豪快に傾けた報復のように口端を伝う液体は、アルティミシアの温かな舌により舐め取られた。
赤く熟れた唇を寄せ、ぺろりと芳しい酒を味わう姿は妖艶を纏う。

「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは私でしょう?」

問い掛けにしては随分な物言いだ。ガーランドは口から瓶を離し、背後へと投げ捨てる。
豊満な胸を押し付けて鏡を誘惑するなど、おかしな話だ。
ワイングラスに残された最後の一滴を含み、押し付けてきた唇から漏れる事を恐れて開く。口腔内に流れ注がれたワインはただただ甘く、ガーランドの血流を速まらせた。

「さぁ、答えてごらんなさい。私の可愛い鏡よ…」

妖しげな笑みを作り上げ魔女の真似事をしてみせるアルティミシアは幼く、けれど確かな力で唇を食む姿は獣をたぶらかす悪女だ。

傾け終えた酒瓶は手放した。
この理性はどちらに傾かせるべきか、さっさと眠ってくれる事を祈りながら、アルティミシアの心地好い口付けに心酔していく。




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