シャントット×WOL
2012/10/21 20:59

title:研究



「さて、次は血を頂きますわ」



シャントットはそう言いながら採血用の注射器を用意し始める。

「……………」

聖域の建物内に作ったシャントットの研究室の天井をぼんやりと見上げているのは、プリッシュが以前拾って来た青年だ。今は装備品を全て外させて、半袖の寝巻きを着せている。

ここ数日はプリッシュがずっと彼を連れ出していたせいで中々捕まえる事が出来なかったが、彼女が眼を離した隙にテレポを使って強引にここに連れ込んだ。

青年と言ったが、その言動は赤子そのもの。

言動は赤子そのものだが、その纏う気配は神々に酷く似ていた。

コスモスの力が宿ったとは言え、最初見た時に感じた全く別の気配はまだ強く残っている。

「右腕をお出しなさい」

青年はこちらに顔を向けて、ゆっくりと右腕を出した。

「良い事?痛みが走ってもじっとしていなさいな?」

そのまま二の腕を縛って血管を探り、消毒をする。

彼は聞いているのかいないのか無反応だ。

その気配と招かれざる戦士であると言う事実がシャントットの興味を強く惹き付けた。

先ずは科学の方面から探ろうと肉体のサンプルを採取する。

髪や唾液は先程終わった。最後は血液だ。

「手をしっかり握って力を入れる様に」

注射針を腕に刺して、血液を採る。

血液は針を通り、管を流れ、密閉された試験管の中へ。



肉体そのものを手に入れる事が出来れば一番手っ取り早いのだが、この世界での死である消滅は肉体すら残らずに消えてしまうから、面倒な事この上ない。

それに肉体が手に入っても気配がなくなっては意味がない。



シャントットは青年の腕から注射針を抜いて回復魔法で止血をする。

彼女の掛けるケアルは、普通の白魔導士が使うケアルガに匹敵するのだから、彼の腕は綺麗に直った。

「さて、サンプルの採取はここまでですわ…後は戦闘能力を測らせて頂こうかしら?装備品一式を身に着けて戻って来なさいな。この部屋の隣に全て置いて来たのは覚えているでしょう?」

「……………」

彼はゆっくりと立ち上がり部屋を出て行く。



彼は人形に等しい。命令すれば恐らくは肉体の一部ですら差し出すだろう。

だがそれでは意味がない。自分がこうして聖域から出ずに研究に勤しむ事が出来るのは他の秩序の戦士がいるからだ。

それは一つでも多いに越した事はない。

シャントットはそんな事を考えながら採取したサンプルを保存していく。



彼が持ち得る戦闘能力を最大限に発揮させて測定をしなければ。もしそれで瀕死になったとしても自分の魔法さえあれば怪我等一瞬で治る。

記憶は皆無だが戦う術は持ち合わせている。手加減はしないし端からする気もない。



そう言っている間に、彼が甲冑を身につけて戻って来る音が聞こえた。

その足音は紛れもなく洗練された戦士を示している。自分が居た世界で起こったあの戦争でもここまでの戦士はそうはいなかった。

「さぁ測定を始めますわよ」

彼が部屋に戻って来て扉を閉めた瞬間にシャントットが指を鳴らせば、部屋は研究室から一瞬にして秩序の聖域を模した空間に切り替わる。



「さぁ、全力で掛っていらっしゃい!」






prev | next


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -