シャントット×ガーランド
2012/10/21 20:55


恋敵=ライバル


「現れましたわね恋敵!」

見上げた先には崖の上で腕を組む少女。ふんぞり返る事により小さな身体を僅かだとしても大きく見せようとしているのだろうか。
シャントットは強大な魔力の渦を巻き起こし、それを風と共に纏い、ふわり舞った。
ガーランドの目前まで降りると子供の紅葉の手よりも小さい其れでびしっと指を差す。瞳は獰猛さと攻撃性に溢れていた。まるで猛禽類だ。

「さぁ!今こそ彼をわたくしにお寄越しあそばせ!」
「…その件に関しては無駄だと以前言った筈だが」

反してガーランドは鎧兜で窺い知る事は出来ないが、声色と肩を落とした仕草で呆れ顔を浮かべているのは間違いなく、しかしシャントットがそれだけで引く訳もない。不敵な笑みを湛えながらやれやれと肩を竦めた。

「無駄、とは…ふふふ、くだらない言葉が存在しますこと。わたくし不利益で非生産的な事柄が大嫌いですのよ、お分かり?」

ふふん、鼻で笑ってはいるが目はマジだ。
つまりは確信をもった上で望む譲渡という事だが、残念ながら目の付け所が若干ずれている。
口から出てくるのは溜め息ばかりで、この世界に訪れてから何度吐き出した事だろうか。目前の少女…いや、淑女によって生み出された溜め息の数は増える一方だ。

「ならば即刻諦めるがよい。奴は誰の所有物にもならんわ」
「まぁ!よほどご自分に自信がありますのね。ですが、わたくしは諦めませんわ」

何故かシャントットは欲する者がガーランドのものであると思い込んでいるらしく、宣戦布告、とばかりに睨み付けた。
生じているすれ違いに気付いているのはガーランドだけだが、それを告げる事に躊躇っている。何故か。その疑問が解けたのはつい先日だ。

「あぁ…わたくしの可愛い化物…貴方のような恐ろしい男に捕らわれて今頃どんな仕打ちを受けていらっしゃるのかしら…うふふふふ」
「何もしとらんというかその笑い方やめんか」

不気味な笑みに背筋がぞくぞくする。この女に過去捕らわれた者が居たとしたら無条件で同情するだろう。一体どのような惨い目に合わされる事か、恐ろしくて想像すら出来ない。ガーランドは絶対に捕まってはいけないと心に誓った。

「…貴様に捕まるよりは幸運だろうに」
「んまっ、心外ですわ!わたくしはただ愛という感情の実験を遂行したいだけですのよ」
「くだらん…」

全くもってくだらない。
渦巻く感情も、隠蔽したい事実も、ましてや彼女が求め焦がれている化物が己だなんて。この鉄火面を、重厚な鎧を、解いた時の驚愕は計り知れない。

「さぁ、恋敵ガーランド!彼を賭けてわたくしと勝負なさい!」

僅かな優越感の奥に、絶対に悟られてはいけない真実を詰め隠した。




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