シャントット×皇帝
2012/10/21 20:53

圧倒的な魔力、それを具現化する力。
シャントットのそれは確かに、支配者の持つものに相応しい。
人々の畏怖と崇拝を集め、ひれ伏させることも容易であろう。
だがしかし。

「優雅でない」

断じて皇帝は、彼女の呼び出した強力な風の刃をかわす。
まあ、と憤慨を装った楽しげな甲高い声が、ごうごうと唸る魔法の向こうに聴こえた。

「淑女に向かって、随分ではなくて?」

そうして皇帝の頭上に広く集まるのは密度の高い氷塊。避けるにも大きすぎるので、相殺くらいしか手がないが、さて間に合うか。
玉杖で十字に空を裂く。そのままそれは刃になって、硬度を上げたであろう氷に向かう。
高い音を立ててぶつかるが、まだまだ。割り砕くには及ばない。

「優雅を語れるほどの腕前でして?」
「なんのこのくらい」

高慢に胸を反らせるシャントットに、皇帝は笑み返してまた杖で描く。
描かれた曲線は、蛇のように宙をのたうって、氷塊に潜り込んだ。シャントットの目元がぴくりと歪む。

「そうきますか」
「ああ!」

皇帝が杖を掲げれば弾け飛ぶ氷塊。降る氷片はきらきらと美しい。
シャントットが苦笑する。

「優雅とは、思えませんけど」
「それは残念」

ならば次をと手を翳して、魔法使いたちは魔を奮う。




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