オニオンナイト×シャントット
2012/10/21 20:53
「く、そ……」
ひび割れたひざで立ち上がり剣を構えるが、それを支えてくれているのは足よりも気力だ。
大量のイミテーション。襲われたのはオニオンナイトと、一緒に行動していたジタンとティナだった。
その前の戦闘で力を使い果たしてしまったティナをジタンに任せて、オニオンナイトは戦場に残った。
数だけの敵など、やり過ごせる。ジタンはすぐに援軍を寄越してくれる。
それでも一人で立つ戦場は広かった。
魔力は尽き、頼れるものは剣だけだ。他の戦士たちのものよりも軽く、細いこの剣。
イミテーションの数はもうそんなに残っていないが、まだいくつか無傷なものがいた。
しかし、それらがいきなり硬直したかと思うと、次々に炎に包まれて消えていった。
「な、んで?」
呆然とするオニオンナイトの言葉に答えるようにして、消えた炎の向こうから、自分よりも小さな影が近付いてきた。
「ようやくすっきりしましたわね」
言葉通り、敵を片付けたのは、この童女のような彼女らしかった。
濃密な魔法の気配に、思わずオニオンナイトの体はのけぞっていた。
「……あんた、何者?」
「あら、いましたの?」
今気付いたというように黒目の大きい目が瞬いた。
その態度にオニオンナイトの顔が咄嗟の怒りに赤くなりかけたが、制すように体が癒された。ケアル、だろうか。途端に体が軽くなる。
そのまま通り過ぎ、少し離れたところで振り向いて彼女は言う。
「なんて。へっぽこくんにしては頑張ったのではなくて?」
不敵な笑みを残像にして、すたすたと彼女は行ってしまう。
オニオンナイトはぽかんと口を開けてしまった。
彼女はなんだか、かっこいい。
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