セシル×シャントット
2012/10/21 20:50
膝を着く彼は騎士だと言う。
シャントットはセシルの行儀の良い微笑が嫌いでは無いが、騎士というものは気に食わない。
「ご機嫌いかがですか、博士」
「まあまあね」
シャントットは紅茶を机に置いて、本を閉じてセシルを見た。
そんな姿勢を期待していなかったであろうセシルは、少し驚いた形に口を変えたが、すぐに温和な微笑を取り戻す。
淑女はその健気さを笑う。
「愚かな子。その称号や期待がなければ生き方も決められないへっぽこくんのくせに、また私に挑戦しますの?」
「……はい」
今度こそ表情を奪う。
セシルはシャントットの意図に屈服し、素直に表情を翳らせた。
生真面目な横顔は、子供扱い出来るほどに幼くないが、シャントットには関係ない。
「だって貴方、この前はあのゴルなんとかさんを兄だとか」
「……それが、どういうことですか?」
大袈裟にため息を吐いても、セシルは少し怯むだけ。彼のこの先の行動は変わらないと分かっているが、言葉を尽くそうとするのだから自分も中々彼を気に入っているのかもしれないとシャントットは思った。
「お止めなさいと言っておりますの。ご自分の価値を他のものやら他人に委ねるのは」
「博士、僕は」
セシルが上げた声を制するようにシャントットは杖を突きつけた。
「講義はここまで。実技はどうします?」
一度噛み締められた唇は、やはりお願いしますと言う。
難儀なものねと呆れながらもシャントットは彼の希望通り、全力を尽くすのだ。
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