シャントット×カイン
2012/10/21 20:48
小さな淑女はひどく傲慢だった。
聖域に引きこもってばかりでは身体がなまってしまう。
そうらしくないことを言い始めたかと思えば、ゆったりとこちらを指差してフフンと彼女は居丈高に鼻を鳴らした。
嫌な予感がしなかったといえばうそになる。
大体こういうことになることはわかっていたのに、どうして自分は回避できなかったのだろうか。
人知れず肩を落とすカインを余所に、事の発端は軽快なステップを披露しながらイミテーションをふっとばしていた。
響く高笑いはもはや淑女のそれではない。
彼女の背後で槍を握るカインだが、やることがなさすぎてあくびをしてしまうほどだ。
戦場でこんなに気が緩むなんて。
彼女の強さは認めているが、たったそれだけでここまで緩んでしまうものなのだろうか。
呆れ混じりに自重して、彼は槍を握りなおした。
後ろで高笑いと共に聞こえる風の音は気にしないことにする。
「…しかし、自称とはいえ淑女のふるまいとは思えんな」
「何か言いまして?」
「…いや」
地獄耳付きですか。
口をへの字に曲げれば、背後で柔らかな息遣いが聞こえる。
振り返ってもそこに淑女の姿はなく、少し遠いところで相変わらずな高笑いが響いた。
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