ジタン×ガーランド

この気持ちは嘘か真か


「試したい事があるんだけど」

呼び止められて座らされ、向かい合ってから既に一時間近くは経過した。
目前の小猿は腕を組んで唸り、首を傾けて眉根を寄せ、唇を曲げて溜め息を吐いたりと、百面相に忙しい。
試したい事とやらを終えてからでも戦いは遅くは無いだろう。闘争は避けられない運命なのだから。
そう思ってはいたが、この状態から何の変化も無く、ましてや何かを試す事すらしないジタンにガーランドは苛つき始めていた。
今すぐにでもこの不毛な時間から脱出し、光の戦士に苦情を言いに行こう、ついでに闘争も。

「小童め、いい加減にせんか」
「………うーん…」
「…聞いておらんな」

時々尻尾がぱたりぱたりと床を打ち、きっと悩み事の最中の癖なのだろう、そんなどうでも良い事をひとつ学ぶ。
一定の間隔で動く尾を、まるで玩具に遊ばれる猫のようにじっと見詰めていた。
それが突然、ぴた、と止まる。
と思いきや、今度は右へ左へゆらゆら揺れ始めた。自然と視線はそれを追い掛ける。
尻尾ばかりに気を取られていたガーランドはまだ気付いていなかった。
先程まで耳障りだったジタンの唸り声が、呼吸もろとも止まっていた事に。

やがて尾は床に垂れ、ぴたりと動かなくなった。
おや、とガーランドが視線を上げると、唇を真一文字に結んだ横顔が何かに耐えるかの如くふるふると震えている。
人の感情に疎いガーランドとて、ジタンが必死に堪えているのが笑い声だという事くらいは分かる。
にらめっこに散々付き合わされた挙げ句、相手を笑うとは一体どんな教育を受けてきたのか。
ジタンの態度が気に食わないガーランドは重々しく口を開く。

「何が可笑しい」
「あー、いや、可愛いなぁと思ってさ」
「何がだ」
「おっさんが」
「………」

さーーーと全身の血液が引いた。彼は混乱にでもかかっているのだろうか。
不安になり、指を三本立てて何本に問うが、あっさり三本と答えられてしまった。混乱ではない。だとすれば洗脳か。
ぐるぐる廻る思考中のガーランドを見ながら、くくくと楽しそうに笑うジタン。

あぁ、やっぱりそうなんだ。

言葉には出さず、口の中で呟く。
そして己の倍以上はあるだろう、ガーランドの手を取り、誓いのキスを。

「俺おっさんの事好きなんだ」



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