ジタン×皇帝
色鮮やかなたからものたち。
確かに皇帝に選ばれた持ち物たちにはそんな表現が似合う。彼の豪華な部屋を彩って得意顔。
金縁に、紺のビロードが張られた宝石箱、紫壇に螺鈿の嵌め込まれたベッドフレーム、紗に砕いた宝石を縫い付けたカーテン、アクセサリー、色々。
「さて、何から盗もうかね」
目映い景色に呆れた声で、ジタンは部屋をくるりと見た。
持ち出すのに簡単で、最も高価なおたから。最もうつくしいもの。
ジタンは黒の化粧台の隅に置かれた、大きなアメジストが印象的な金の腕輪に目を付ける。
これかな、と手にしたところで笑い声。
「それよりも、うつくしいものはここにあるぞ」
ベッドの上で呼んだ声は、部屋の主だ。
華奢な巣裸の首から肩、胸にかけて広がっているのは、多種多様の宝石をレース状に編んだもの。
うつくしいものはそれだろうか、それともそれを身につけた皇帝自身か。
とりあえず、ジタンは腕輪を元の位置に戻した。
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