ジタン×セシル
「僕を大事だと言うんなら」
ジタンの手首を、セシルは力強く握った。
どれだけ伝わるか分からないけれど、きちんと話をしなければならないとセシルはずっと思ってきたのだ。だから、体だけでも逃げられないようにと細い手首を掴む。
「ジタンも、自分を大事にしてくれ」
「……してるよ」
セシルの両の目からジタンが視線を逸らす。
セシルが何を話そうとしているか、うっすらとでも感じ取ったのだろう。
セシルは別に、ジタンの生き方を否定したいわけではない。
否定したいわけではないけれど、すべてに肯定も出来ない。
誰かのために自らの命を犠牲にすることを、全く躊躇しないジタンを見ているのは、心が痛いのだ。けれど、誰かを助けたいその気持ちはセシルにもよく分かる。
誰も死んじゃ駄目なんだ、とジタンはいつかセシルに行った。
ならば、ジタンだって、そうだろう?
「僕は、ジタンがたいせつだよ」
掠れた声で、セシルはどうにか、言う。
「――泣くなよ、な」
ジタンも眉を下げたけれど、彼はきっと、泣かないのだろう。
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