カイン×ジタン

その無条件の信頼に、
澄んだ真っ直ぐな瞳に、
これだけは裏切れそうにないと思ったのだったか。

それはもう随分前のことのように思える。いつだったか。
そんなことを、今、その彼を目の前にして思い出した。


「ありゃあ無茶しすぎた、…よな。……悪い。」

「いや、大事にならずに良かった。」


しかし今この時、あのいつかの瞳は極度に動揺しているようだった。
彼を危機から助ける前におそらく何かしらがあって、その先達ての無茶になったのだろう。


「それにしても助かったよ。ありがとな。」


それが彼に接触する適当な理由になるとは、とんだ皮肉だった。
変わらずに向けられている信頼が心苦しくない、と言えば嘘になる。

しかし、


「おまえが無事なら、それでいいさ。」


しかし、これでいい。

揺らいだまま眠らせることに少々思うところはあるが、ただ消されてしまうよりはいいはずだ。
次にはその揺らぎも沈めて、いつかの穏やかなそれに戻るようにと。

今は護ろうと、
護るために裏切るのだと、
そう決めたのだ、許してほしいとは願うまい。




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