ジタン×カイン
右へ左へ。
ふよふよとしっぽを揺らしながら、ジタンはにんまりと笑った。
無愛想な背中は今日も今日とて何も語らない。
いや、言外についてくるなと言われているような気がするが、それはジタンが気にするべきことではないだろう。
実際はそうではないが、自信にそう言い聞かせて彼はその背中についていった。
辿り着いた先は月の渓谷。
彼はきっとこの場所がすきなのだろう。
この場所につくと、彼の雰囲気は穏やかになるような気がする。
ここにきてやっとジタンは口を開いた。
「よぉ、カイン」
「…ああ」
兜を外さないまま返されたそれはどこかそっけない。
ふう、と呆れ混じりのため息をついて、ジタンはカインの隣に腰をおろす。
もうジタンにとって習慣となってしまったそれも、まだカインは慣れないらしい。
びくりとその肩がわずかに跳ねた。
「こわいか?」
「…何が」
「俺が」
こちらを向いた竜顔に手を伸ばす。
ゆっくりと外せば、月の光によく似た金髪がこぼれた。
空色の目がジタンを捉えると、紫に彩られた唇がゆったりと弧を描く。
「まさか」
そう返すカインに苦笑した。
こうして、気丈な彼はすべてを隠して笑うんだ。
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