バッツ×WOL
title:順序がおかしい
バッツは走っていた。彼の元へ。
伝えなければならない、思いを携えて―――
――――――――――
旅人だからって孤独を愛している訳じゃない。人なのだから、人を求めている心は常にある。
それを求めた先は我等がリーダー、ウォーリアオブライトだった。
彼になら全てを晒け出しても良いと思った。
バッツはその感性のままに彼を求めた。
身を寄せ、唇を重ねて、只ひたすらに求めた。
彼はその無愛想な顔を困惑に染める事もなくバッツを受け入れていた。
それが彼の優しさなのもしれないし、良く判らないままに流されているだけなのかもしれない。
それにバッツは甘えた。
甘え、更に求め、貪った。
だがある日、ふとバッツの中に一つの疑問が過ぎった。
どうして、彼を求めたのだろう。
求めるだけなら、他の者でも良かった筈だ。
どうして彼を求めたのだろう。
バッツは記憶を掘り起こす。
最初は彼になら全てを晒け出しても良いと思ったからだった。
何故彼にならと思ったのか。
風の様に掴み所がなく、明るく振舞って、場を盛り上げる。道化て見せ、馬鹿をやる。それが皆が思っているバッツ・クラウザーと言う人間だ。
だがいつもそうは立ち振る舞えない。別の自分だってあるのだ、それが人間だ。
だがそこを晒せる相手となると、そうは居ない。それもまた人間だ。
そこを晒せる人間は誰かとバッツは考えた。
行き着いた先がウォーリアオブライトだった。
ウォーリアならその強く優しい心で、全てを受け入れてくれると思ったからだ。
実際彼はバッツの心も身体も受けて入れてくれている。それにどれだけ心を癒され、嬉しく思ったか―――
そこでバッツはまた思った。
彼に、自分のこの思いを伝えた事があっただろうかと。
答えは、NO。
いつも只ひたすらに求めていただけだったバッツは、彼に何一つ伝えてはいなかった。
そこにバッツは驚き、そして後悔した。
自分だけが満たされて、自分だけが幸せを感じ…自分ばっかりではないかと。
本能のままに動いた結果がこれだ。
彼の事を何も考えて…いや、考えてはいたが、何一つ伝えていなかったのだ!
――――――――――
そして場面は冒頭に戻る。
彼は確か、今日は部屋で武具の手入れをしている筈だ。
廊下を走り、階段を駆け上がって、彼の元へ。
彼の部屋の扉をノックもせずに勢い良く開ければ、そこにはベッドに腰掛けて武具を磨いているウォーリアオブライト。いきなりの来訪者に眼を瞬かせて固まっている。
バッツはドアも開けっ放しで、息を整える事もなく彼に歩み寄りその身体を抱き締め、言った。
「ずっとずっと、愛してた。これからも、ずっと…愛してる」
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