ガーランド×バッツ

報われない思い

ズゴォン……ドォン……

「ん〜……今日も平和だなぁ……」

あまり遠くとは言えない辺りから恐らくバトルの爆音やら破壊音やらが聞こえる中、だがバッツは危機感を感じる様子も無く大きく伸びをしながら散歩していた。

「色んな所に行って新しい事を見つけたり知ったりするのも楽しいけど、こうやってのんびりした時間を過ごすのも悪くないな」

ドスンッと何処からともなく、勢い良く飛んできたバッツの身長よりも大きな岩のカケラが近くの地面に突き刺さるが、バッツは慌てる事なくそれをのほほんと眺めた。

「自分の世界に帰って年取ったら、大人しく故郷で腰をすえるかな」

ブボバァッ!!と行く手で火柱が上がり、周囲に熱気を振りまく。
それでもバッツは対して驚く事無く、少し進路を横にずらし鼻歌混じりで散歩を続けようとした。
すると目の前に誰かが倒れている事に気づき、バッツは流石に足を止めた。

「……誰だろ?」

バッツは身構えもせずその人物の元へと小走りで近づいた。
俯せに倒れ表情の見えない人物を見下ろす位置まで移動し、バッツは思わず眉をひそめた。
その人物は全身が黒だった。
バッツは一瞬先程から遠くで繰り広げられる戦闘に巻き込まれ焼き焦げたのかと思ったが、人物はそれよりも遥かに濃い漆黒の様な色に全身が染まっていた。
故に表現は『黒かった』のではなく、『黒かった』と言わざるを得ないのである。

「えっと……」

とりあえずどうしたものかとバッツは思案し、やがて何かを決めたらしく大きく片足を上げた。
そしてそのまま何の躊躇もなく、彼は倒れ伏す人物の背中を踏みつけた。

「ぐごがぁっ!!」
「あれ?この声は……」

痛みに悲鳴を上げ飛び起きた人物の声に聞き覚えがあり、それが誰であったか思考を巡らせる前にバッツは相手に胸倉を捕まれた。

「貴様!!傷つき動けぬ相手によりにもよってこの様なトドメの刺し方をするとは、それでもコスモス軍か!!」
「あ、わかった!!
あんたガーランドだな!!」

相手にユサユサと揺さ振られながらも、やっと答えを見つけ出しバッツはポンッと手を叩き満足そうな声を出す。

「へーあんた、鎧脱いだら凄いんだなー」
「感想を述べる前に、他に言うべき言葉は無いのか!!」
「あ、踏んだ事か?
悪い悪い、何かの罠だったら危ないなーって思ってさ」
「貴様の行動の方が余程危ないわ」

ブツブツと文句を言いながら、ガーランドはバッツから手を離した。

「でもさ、あんた何でこんな所で寝てたんだ?
ハッキリ言って危ないぜ?」
「寝ておったのではない、あ奴らの戦いに巻き込まれただけだ!!」

そう言ってガーランドがある方向に指を差した瞬間、彼の行動に答えるかの様にドガァッと爆発音が聞こえ岩と煙が上がった。
バッツが目をこらしよくよく見てみると、煙の中で見覚えのある人物が二人空を舞い戦っていた。

「あれ……ジタンとクジャか?」
「うむ……かれこれ二時間は争っておるかの
流石にそろそろやめさせなければならぬと思い、仲裁に入ったのだが……」
「巻き込まれて吹っ飛ばされたと」
「うむ……
クジャの奴など、むしろわしの姿を確認し『よしっ』と呟いて火を放ちよったぞ」
「相変わらず嫌われてるんだな
まぁ、そう落ち込むなよ
いつかはきっとわかりあえる日が来るって!!」

ため息混じりにぼやくガーランドに、バッツはポンポンっと肩を叩き励ました。
ガーランドは例え気休めだとわかっていても、優しい言葉をかけてくれるバッツに思わず目頭が熱くなるのを感じた。
その時……

「これで終わりにしてあげるよ……喰らえ!!」

思っていたよりも近くからクジャの声が聞こえ、そして周囲が赤色に染められた。

「そう言われて、素直に当たるわけないだろ!!」

それと同時に、バッツ達二人の目の前をジタンが駆け抜けて行った。

「ぬ……!?」

ガーランドが視線をジタンが来た方向に向けると、すぐ側まで巨大な炎が迫って来ていた。

「まずい!!」

いまから避けるには、絶望的に時間が足りなさ過ぎる。
ガーランドはせめてバッツだけでも庇おうと、彼の前に立つべく相手のいる位置を確かめようと後ろを振り向いた。
だが既に、そこにバッツの姿はなかった。

「なっ……!?」

ガーランドが困惑している間に……

チュドォォオォンッ!!

炎は大地に着弾し派手な音を上げ炎上し、ガーランドは空高くへと吹っ飛んだ。

「危ない危ない……
もうちょっとで巻き込まれるところだったぜ
それにしてもあいつ、回避能力低いんだなー」

ヒラヒラと宙を飛ぶガーランドを眺めながら、とうの昔に退避していたバッツは彼の気持ちを悟る事もなく呑気な声を上げるのだった。



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