皇帝×バッツ
触り合い
「その頭の蛇触りたい」
「断る」
そう冷たく言い放つと、皇帝は彼に背を向け歩きだした。
「何でだよ、少しぐらい良いじゃないか」
「ついて来るな、煩わしい」
「なーなー!!ちょっとで良いからさ!!
前にどんな感触なのかなって考えてから、気になって仕方ないんだよ」
「知らん、そんな事
貴様が悩もうがそれでハゲようが、私には関係ない」
「勝手にハゲさせんなよ、ひどいな
なーちょっとで良いから……さ!!」
「うぼぁ!?」
台詞の途中で突然飛びかかられ、皇帝はバランスを崩しバッツと共に地面に倒れた。
「っ……貴様!!
この私が珍しく穏便に事を収めてやろうとしたら……!!」
「なーって!!頼むからさー!!
皇帝も俺の好きな所触って良いからさー」
「いらぬわ、痴れ者が!!」
バッツの頭に皇帝の杖が振り落とされ、ゴンッと盛大な音が鳴った。
「いってぇ……!!」
「全く……無礼者め」
パンッパンッと乱れた衣服を払い埃を落とし、皇帝は優雅に立ち上がる。
そしてそのまま立ち去ろうとしたが、バッツにガシッとマントを掴まれ身動きが取れなくなった。
「………貴様………」
「なー!!本っ当に頼む!!」
額に青筋を浮かべ睨みつける皇帝に、バッツはこの通り!!とマントから手を離しパンッと頭上で手を合わし顔を下に向け哀願する。
「……………」
皇帝はこの距離からフレアをぶつけてやろうかと手をかざしたが、気まぐれを起こしたのか考えを変えその手をバッツの頬に添える。
そしてそのまま指をすべらせ顎に伝わし、グイッと持ち上げ自分の方へと視線を移させた。
「良いのだな?」
「皇帝……?」
「何処でも構わないのだな?」
「あ……あぁ、構わない……けど………」
まさか見つめ返されるとは思ってなかったらしく、ドギマギしながらバッツは頷いた。
その言葉を聞き、皇帝はゆっくりと空いている手をバッツに向ける。
そして自分の方に向けているその唇にそっと爪を触れさせた。
「えっと……」
無意識に緊張するバッツ。
そんな彼の顔に、皇帝は自らの顔を近づけ……
そして両手を左右の頬っぺたに差し出し指で掴みムニーッと伸ばした。
「ふへぁっ!?」
突然の出来事に痛みよりも驚きが勝り、バッツは間の抜けた声を上げる。
「ふっ……何という間抜けた面だ」
くっくっ……と人の悪い顔を浮かべ笑い、皇帝は指を離し彼を解放する。
「いってぇ……つーか酷ぇー」
「何処でも触って良かったのだろう?」
「引っ張って良いとは言ってないぜ!!」
不遜な態度を取る皇帝に、恨みがましい表情でバッツはブーブー文句を言う。
「吠えるな、下郎が
それよりも……触りたいのだろう?」
騒ぐ彼にどこ吹く風といった様子を取りながら、皇帝は宙に座りバッツを指で手招く。
「え?……あー!!そうだった!!」
先程までの怒りはもう消えたらしく、バッツは嬉々として彼に近づき念願の蛇に触れた。
「どうだ?」
「……思ってたより冷たくて固いかも」
「残念だったな、期待外れで」
「ん〜……でもまぁ、触れたから良いや!!」
そう言ってニカッと笑うバッツに、皇帝もつい笑みを浮かべ返してしまうのだった。
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