バッツ×オニオンナイト
オニオンが、バッツのことが一番好きだと思う瞬間はこんな時。
その透き通った瞳の下に、謎めいた笑みを浮かべて、手招きをしてくれる時。
おいでおいで。
子供扱いというよりも、彼自身が子供みたいなものになって、特別の秘密を見せてくれる。
もう片方の彼の手のひらには、今日は何があるのだろう。しゃがみこんで、額を近づけて作った狭い空間が、二人の秘密基地だ。
「今日は何を見つけたの?」
まるでオニオンの方が年上のようにバッツを促すと、得意に彼の大きな手が開く。
荒れた皮膚の中央にあったのは、白と茶の混じる固そうな、小さな、何か。
オニオンは視線で確認をとって、それを摘み上げた。手の温度より低い温度のそれはやはり固く、すべすべしたところとざらざらしたところがある。
理解できて、オニオンはバッツの顔を見た。
「骨!」
「うん、骨」
骨。骨だ。
何かの生き物の、汚れ具合からして、自分たちの夕飯の残りではないであろう白い欠片。
生き物の少ないこの世界に、さまざまな瞬間だけを寄せ集めて、歴史なんか持っていなさそうなこの世界にまた不思議が増えた。
オニオンはバッツの手のひらに骨を戻してまた見つめる。
「バッツ、僕はね、コスモスが守っているこの世界は、僕たち、もしくは誰かの記憶を頼りに作られたものなんじゃないかと思ってるんだ」
「ああ」
「色々大雑把なところもあるでしょ?それは人の記憶の不確かさのせいなんじゃないかなって」
骨を指先で転がす。角ばったところが少し痛い。
バッツの耳を澄ました様子が照れくさいのだけれど、今更言うことを撤回しない。
「だから、これはなんだろう」
バッツが大事そうに手を閉じた。骨は見えなくなってしまう。
「誰かの記憶かな。こんな小さな骨が」
「うん」
「大事にしよう」
「宝物箱にいれておこうね」
二人の宝箱の中身は本当に他愛もないものばかりだ。乾燥させた果物の皮、押し花、石、様々。
他人から見ればあまりにも子供っぽい中身だろう。バッツはともかくオニオンまでと思うだろう。
しかし二人は大真面目だった。
これらガラクタたちこそが、二人がこの世界に対して真剣である証なのだ。
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