バッツ×カイン

もし自分が本当に風だったとしたら、きっと空へ舞い上がる彼をさらなる高みへ運べただろう。
危険な空へ跳ぶ彼を強い轟音で地上にとどめることができただろう。

「ちくしょ…」

包帯の巻かれた青白い彼の腕を握りながら、バッツは呟いた。
ぼろぼろの状態で聖域に戻ってきたカインを見た時は全身の体温がいっきに下がったのを覚えている。
必死に回復させている味方たちを見ながら、結局自分は何もできないでいた。
情けない、悔しい。
未だに眼を覚まさない彼の頬を撫でて、バッツは自嘲する。
まだくすぶる思いは告げられていないけれど、想いをよせる人がこんな状況にいるのに自分は何もできないなんて。

「…ごめんな」

できることなら守りたい。
けれど、プライドの高い彼はそうさせてくれない。
自分としても、彼の誇りを利己的な思いで汚すのは嫌だった。

「……バッツ?」
「…っ」

掠れた、それでも確かに呼ばれる名前。
眼を見開いて金色の縁取る青を見つめれば、それは確かに開かれていた。
握っていた手をさらに強い力で握る。
この冷たい手に自信の体温がわけれたらいい。
カインの名前を呼びながらそう願えば、彼の細い手はゆっくりと握り返してくれた。



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