WOL×ティーダ

「やったー!勝ったぁぁあ!」

笑っ、た。
こちらを振り返って、拳を突き上げて、確かに私を見て、彼は笑った。戦闘後でくすんでいた世界が光を取り戻して輝いた。戦いの匂いに冷えていた身体があたたかくなった。いや、自分が冷えていたのだと、そのあたたかさを知って、今はじめて気付いた。
驚きにじっと彼を見れば、彼は不安げに拳を下ろし、首を傾げた。

「リーダー?どうしたッスか?」
「……君は……」
「え、オレなんかマズった?」
「あ、いいや」

なくなってしまった笑顔に焦り、小さく首を横にふる。誤解させてしまったようだ。

「もしかして怪我したとか?」
「いや違う、すまない。私はおそらく、嬉しかったのだ」
「へ?」
「笑ってくれただろう。温かかった」

私は彼に今、はじめて笑いかけられたのだ。よく笑う少年だとは思っていたが、私とはほとんど交流がなく、笑うところを遠目で見るか、どこかぎこちない笑顔で会話するだけだった。この偶然の共闘で、彼は私に心の底から笑いかけてくれた。他人に向けられる笑顔と、自分に向けられる笑顔が、こんなに違うとは思わなかった。自分に向けられるそれは、こんなにあたたかいのだ。

「君は……すごいな」

ティーダは少しキョトンとした後、また先ほどのように、輝くように笑った。

「へへっ、誉められちゃったッス」

嬉しそうに、嬉しそうに笑う。
ああ、その笑顔だ。幸せそうな、楽しそうな。
それがとても、あたたかい。

「えっと、じゃあ、みんなのところ、戻るッスか」

ティーダは少し恥ずかしそうに私から顔を逸らすと歩き始めた。ひろがる距離。急に温度が下がっていく気がした。
気がつけば、彼を呼びとめていた。

「ティーダ、頼みがある」
「ん?なんスか?」

振り返る彼から感じる温度。あたたかい。
そう、その温度を知ってしまった私は、君なしでは凍えてしまうかもしれないとさえ思う。だから、

「私の隣を歩いてくれないか?」
「えっ」
「駄目だろうか?」
「えっ、いや、いいッスよ、うん」

彼は少し困ったように首後ろに手をやりながらも頷いて、そうして私の隣へと走り戻ってくると、私を見上げ、明るく笑った。
とても、とても綺麗な笑顔だった。



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