ティーダ×ガーランド
反対言葉ゲーム
「これから俺の言葉と反対の言葉を言って。いいっスね?」
一方的に始められたくだらないゲームは少年の無邪気さが反映され、要するに意味が分からない。
何故そんな事をしなければならないのか告げられる理由も無く、互いにとって有益な箇所など見当たらない。ただ時間を浪費する為だけの行為だ。
くだらん、一蹴してこの場を去るのがガーランドにとって最良なのだが、それが出来ずに黙って少年を見下ろしていた。
眼下の少年は今にも溢れんばかりの涙を湛え、瞬けば決壊は容易いだろう。
指先を僅かに折って拭ってやれば、滴は線となって頬を伝い、ぽろぽろと溢れ落ちて行った。
混沌の駒として召喚された少年は、がらんどうの心に奮い立たせた唯一の感情で行動していた筈だが、これは一体どういう事なのだろう。
子供のようにしゃくりあげる事はしない。ただ静かに涙が流れている、それだけ。其処に感情は無いのかもしれない。だが、ガーランドにとっては厄介なものだ。
「…愛さないで」
涙声は喉に絡み付いて剥がれた。
両手を伸ばした少年はこんなにも幼かっただろうか。
応える為では無い、条件反射という現象だ。理由をつけなければ動けない、ガーランドはティーダを抱き上げる。
ぎゅうと腕を回す。与えられた冷徹の温もりを逃さないとばかりに。
何処かで失ったか、それともまだ見ぬ愛を、求める相手としては不相応だ。
応える為では無い、応える為では。
言葉を発するにはいくつもの理由が必要だった。
これは遊戯だ。子供の遊戯に付き合ってやるだけだ。時間の無駄だが、駄々を捏ねられ浪費するよりはマシだろう。
理由は言い訳と化す。
それでも必要だった。懐に入れるつもりなど毛頭無いとしても。
「…愛しておる」
ただ、慰める行為だけだとしても。
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