セシル×ティーダ

例えば、普段は年上ぶってニコニコしていても、僕だって時々は遊びたくなってしまうもので。特に今日はティーダと二人だったから、その動作を見るたびにからかいたくてうずうずして、けれどそれは僕の役割じゃないと飲み込んでいた。
だからだろう。夜になってテントに入って。
『よっしゃー!寝るぞー!』なんてテントに駆け込んでごろごろした彼を見た僕は、つい耐えられなくて笑ってしまったのだった。

「ティーダはかわいいね」

なんて本音を零して。
当然、ティーダは可愛いと言われたのが気にくわない。むっとして寝転がったまま顔を上げ、こちらを少し睨んだ。僕はごめんごめんと軽く謝って、彼の隣に座った。寝転がっていた彼はぱっと体を起こすと、僕から離れるように位置をずらして座って、僕と向かい合う。

「あれ?寂しいなあ」
「頭撫でる気だったろ」
「そんなことないよ?」

うーん、なんでバレたんだろう。
おかしいな、本当にさり気なく隣に座ったのに。
ティーダはこちらを警戒しているようだった。いつもだったらもう少し甘やかさせてくれるのに、今日はやたらと固いガード。可愛い、が効いたみたいだ。失言だったな。
でも僕も引き下がれない。今日一日我慢したのだ。僕は今、最高に彼を甘やかしたい。甘やかしたい。
さてどうしたものか、考えていると、彼が僕から目をそらした。おや、と見れば、彼は少し視線を迷わせ、逡巡した後、すすす、と僕のそばに寄ってきた。んん?

「……仕方ないッスねー」

彼は視線を逸らしたままそう言って、僕の髪を撫でた。

「うわ、セシルの髪ふわっふわ」
「あはは。どうしたのティーダ」
「オレの気持ち、味わえばいいッス」
「ああ、なるほど」

髪を通り過ぎてゆく指の感触は、くすぐったくて優しくて、なるほど少し恥ずかしい。けれどもとても暖かくて、あまりにも幸せなものだから、僕はつい笑ってしまった。

「オレの気持ちわかった?」
「はは。うん、くすぐったいね」

心がほかほかするよ。幸せだ。
手のひらの暖かさも、こんなに近くに人がいてくれることも、こんなに近くにいてほしい人がいることも。こんな僕にそれが許されている今が、すごく、すごく幸せで、泣きそうになる。
……ああ、と僕は気付く。
だから彼は撫でて欲しくなかったのか。

「なるほどね」

泣いてもいいのに。意地っ張りなティーダ。可愛いなあ。寂しがりやな癖に、意地っ張りで甘え下手で泣き虫、そんな君がとても愛しいよ。
僕はそのまま彼の頭へと手を伸ばし、その明るい色よ髪をくしゃりと撫でた。

「なんで撫でんだよー!」

不満気な彼の声に僕はまた笑って、そして、彼をそっと抱きしめた。



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