ケフカ×ガーランド
2012/09/17 17:41


甘くふわふわ砂糖菓子


何とはなしに踏み込んだ実験室に立ち込める、嫌な匂い。
不穏な空間に似合うのはきっと腐臭に近いものだろうが、ガーランドの鼻腔に届き、眉を寄せさせた匂いはそんな狂気めいたものでは無かった。

甘い。
物凄く、甘い。
存在していない筈の甘味が口腔内にあるような錯覚を覚えるほど、充満した甘い匂いは強烈だった。
甘味自体は嫌いでは無いが、ここまで凄まじいとなると流石に胸焼けを起こしそうだ。
感じた目眩と頭痛に目を細め、この原因を探すべく階下を覗き込むとすぐに見付かった。

「ケフカ、何をしておる」
「ありゃっ」

顔を上げた道化師は、しまった、と舌を出すが、すぐさまクスクスと気味の悪い笑みを浮かべた。
主犯は確実に彼だろう。証拠は彼の目前に並べられた甘ったるそうな菓子類だ。ガスバーナーに掛けられているフラスコからは桃色の、やはり甘い煙が吹き出している。
ティナやクジャ、ティーダが見たらさぞかし大喜びする事だろう。しかしガーランドにとってこの状況は不快でしかない。頭を押さえながら階段を下りると、上からでは気付かなかったが、ケフカはチョコレートやら生クリームやらを全身に飛び散らせていた。

「………」
「おや、どうかしましたかぁ?」

呆れて溜め息を吐く姿を楽しんでいるようだ。ケフカは相変わらずにこにこと楽しそうに手を動かしていた。腕の中にはボールと泡立て器。ガチャガチャ動かしているが物凄く下手だ。全身にまみれている理由が良く分かった。
どちらかと言えば神経質で潔癖と思っていたが、どうやら夢中になるものには無頓着らしい。

「何をしておる…」
「見てわっかんないのー?お菓子作りですよ!頭使うと甘いモノ欲しくなるんですよねェ」

ケフカがお菓子作り。
まるで似合わないフレーズに思わず固まった。
ちらりテーブルに視線を遣ると、完成されたケーキやらプディングやらが並べられている。過程はともかくどうやらセンスはあるようだ。
しかし似合わない。

「今似合わないーって思いました?マシタよね?」
「とうに思っておるわ」
「ですよねェ」

うけけ、響く笑い声は相変わらず狂っている。今行っている事も狂った結果なのだろうか。
指に絡み付くクリームをぺろり、赤すぎる舌が舐め取った。

「勿論、キモチワルーイものの方が大好きですけど、貴方にはお似合い過ぎちゃいますし?」
「…成程、嫌がらせの一貫という事か」
「そーゆー事!」

此処に見回りに来る事くらいお見通し!





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