カオス×セシル
2012/09/17 16:46


背中に強い衝撃が走ってから忍び寄って来たのは、確かな死の気配だった。
霞んでいく視界の中で、息も絶え絶えにセシルは唇を動かす。

「さいごに」

押し倒されているのに、微塵も甘い雰囲気がない。そんな場違いなことが頭をよぎって笑いそうになる。
実際は表情の筋肉を動かす力すらセシルには残っていなかったけれど。
カオスに命を奪われてしまうのならば、精一杯やり切った上でそうなんってしまうのならば、道はもう変わらないのだろう。
諦めではない。諦めではない、と思いたい。
大袈裟に咳込んで、セシルはカオスを見つめる。

「さいごに、あなたをだきしめても、いいですか?」

己の力不足での悔しさに滲んでいく世界で、目を見開いたカオスの表情だけが、セシルの瞳にははっきりと映っていた。




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