カオス×カイン
2012/09/17 16:45
どこか鈍い色をした金色を見つけた。
竜顔の兜から覗く空の色をした眼は濁っていて、まるでこちら側のようだと笑った。
すると、こちらの意図をくみ取ったのだろうか、空色がゆったりと細まる。
しかし、その手に握られた槍はひどく鋭利に輝いていた。
「秩序にいながらも混沌の色を見せるのか?」
「さあな。俺自身、なぜこちら側なのかわからない」
「それは惜しいな。お前の狂気はひどく良い色をしている」
「光栄だ、混沌の化身よ」
なら、どうして俺を呼ばなかった。
ぞっとするほど美しい微笑みを浮かべながら彼は言う。
カシャリと金属のずれる音がしたかと思えば、彼の白い手が竜顔の兜を外していた。
こぼれた金糸は光のない混沌の地であっても煌めいている。
高貴なものだと皮肉をくれてやれば、その騎士はこれ以上ないほどうれしそうに笑って見せた。
「俺を、消してくれないか」
「なぜ」
そういうわりに、その槍はただひたすらに鋭利だ。
今にもこちらへ飛びかからんとしている脚も、槍を握りしめる手も。
すべてが秩序のそれなのに、肝心な瞳は混沌の色に濁っている。
曖昧なその存在はなぜか愛しい。
「惨めなんだ、こんなの」
俺の誇りが許さない。
けれど、無抵抗のまま人形にこの身をくれてやるほど俺は安くないから。
「だから、俺を」
願わくは、次はそちら側へ。
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