皇帝×ライトニング
2012/09/16 22:50
「ふ、まだ諦めぬか」
嘲笑と共に吐き出された言葉は聞かなかったことにして。
ライトニングは震える腕で自身にケアルを掛ける。
柔い光は身体にまとわりついて強く輝くが、しかし傷を完全には癒せない。
剣が握れれば充分だと、ライトニングは転がったブレイズエッジに手を伸ばす。
それより早く、悪趣味な靴が甲高い音を立ててブレイズエッジを踏みつけた。
「無様だな」
見上げた先、顎をあげ見下す暴君は、嗜虐に歪んだ表情を浮かべている。
侮蔑の視線。
戦士としての屈辱。
けれどライトニングは屈しない。
突き付けられた杖を、暴君を、射抜くような鋭い視線で睨みつけた。
不快を露わにするかと思いきや、暴君は愉快そうに鼻で笑う。
舌打ちし顔を逸らすが、金色の杖が鼻先から喉元へと動く。
先端を顎に当てられ、無理矢理に、顔を上げられる。
「………ほう?」
粘着質な視線、嘲笑混じりの冷淡な声。
言いようのない不快感に、ライトニングは更に瞳に力を入れる。
唇の端を釣り上げる暴君の杖を手甲で思い切り振り払い、屈んだ体勢のまま足払いを放つと勢いそのままに、ライトニングはブレイズエッジの元へと転がるように移動した。
手に馴染む感触に僅かに安堵の息を漏らし、構える。
攻撃を避け、ふわりと降り立つ暴君が三度、ライトニングを見据えた。
至極、愉快そうに。
「気の強い女は嫌いではない」
暴君の声とライトニングの舌打ちは、ブレイズエッジの発砲音に掻き消された。
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