ゴルベーザ×セシル
ゴルベーザの行動はすべて目の前にいるセシルを生かす為であり、逆を返せばセシルがいなくなった世界になどゴルベーザにとっては何の執着も湧かない。
可能ならば共に生きていたいと思うけれど、それは過ぎた願いというものだ。
セシルさえ生きていれば。ゴルベーザにはその思いが強かった。
「それじゃ駄目だよ。僕のために兄さんが犠牲になるなんてそんなのは嫌だ」
真面目な顔でセシルに言われ、ゴルベーザは兜の下で苦笑する。
セシルを馬鹿にしているわけではない。ゴルベーザがセシルとのこれからを望むように、セシルも同じ気持ちでいてくれることが嬉しかったのだ。
笑った気配が分かったのか、セシルが軽く頬を膨らませる。
「笑い事じゃないってば。兄さん、ちゃんと生きてて」
「それは約束するわけにはいかない」
「どうして」
「私はセシルが大切だからな」
「それなら、」
言って、セシルは俯いた。
その先の、セシルが飲み込んでしまった台詞がゴルベーザには容易に想像できる。
セシルは騎士だ。己を犠牲に誰かを守る意思が屈強だと身を以て知っている。だから、ゴルベーザに強く言えないし、当然ゴルベーザもあっさりと受け入れるわけにはいかない。
共に生きる未来を望みながら、そこに自分がいないのかもしれない矛盾。
けれど、ゴルベーザの描く未来には、必ずセシルが生きている。
それだけは、決まっている。
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