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「死にたい」


ポツリ、と高杉は呟いた。ああ、また出たよ死にたい発言。死ぬ気もない上に死ねない癖に、高杉は死にたいと言う。それを俺は病気だと思う。頭の。


「もう無理。全部嫌。全部ダリィ。……死にてェ」
「あー。じゃあ死ねよ」


ふう、と煙を吐き出す。チラリと隣りに目をやると、高杉はぎょっとした顔で俺を見ていた。なぜなら、俺は今まで高杉が死にたい、というと、そんなこと言うな!と熱く返していたからである。それが何度も何度も続けば、ああまたか。めんどくせーな、という具合になるのだ。いや、なったわけだが。


「死ねば?ほら、さっさと死ねよ」
「え、あ…おぅ……」
「ほらそっから飛び降りろよ。多分死ねるぜ?」
「あ、そう、だな……」


フェンスの向こう側を煙草で指せば、高杉はゴクン、と喉を鳴らして唾を飲み込み、胸ポケットに入れていた煙草を取り出した。


「おいテメー死にてぇんだろ?煙草なんて吸ってねーでさっさと死ねよ」
「いや、あの、最期の一服、したくて、よ……」
「ああそう。……つーかさぁ、高杉ィ」
「ん、なんだよ…」
「マジでお前痛いわ」


そう。高杉晋助は言動や行動の全てが痛いのだ。意味なく左目に眼帯をし、リストカットしましたといわんばかりに手首に包帯を巻き、昼飯を食った後にはあからさまに薬(多分サプリメントかなんかだと思う)を飲みだす。やること全てが、思春期真っ最中の中学2年みたいで、俺が出会った中で一番一緒にいて恥ずかしい男だった。だから高杉には友達と呼べるヤツはこの学校にいなかった。俺ぐらいしか。


俺のストレートな言葉を聞いた高杉はポロ、と煙草を口から落とした。ああ、まだ半分以上あるのに、もったいねーなぁ。


「土方、オメー……」
「んだよ」
「…いや、もういい。もう、オメーとは話さねェ……」


隠れていない右目に涙を溜めながら、高杉はバッと立ち上がり、走って屋上から出て行った。少し、かわいそうなことしたかも。一瞬そう思ったが、やっぱ止めた。屋上のドアの摺りガラスに、俺が追いかけてくるのを待っている影が見えたから。


「ホント、しょうがねーヤツ…」


苦笑しながら一人ごちる。そして立ち上がり、俺を待っているであろう高杉のところへとゆっくり歩き出した。痛いヤツではあるが、それ故にかわいいなぁと思ってしまう俺も、中々の末期である。




♪ART-SCHOOL

20110225

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