「お前、マジ汚ねえ!」
「だ、ってえ…!」


止めどなく流れる涙に、目の腫れと大量の鼻水。
いつも酷い顔が更に酷いと叫ぶシカマルの呆れた声。
それでも見放すことなく、ティッシュを差し出す彼にどれ程救われていることか。


「いいから早く拭けよ、その鼻水!」
「うわああ、…もう、やだよおお」
「はいはい、分かったから落ち着けって」


何故こんなに泣いているか何てひとつに決まってる。
ずっと憧れていたカカシさんが結婚することが決まった。
好きだった訳ではない、ただ憧れていただけだと思っていたけど、いざカカシさんが結婚することを知ればこんなに悔しくて悲しいことはない。
事実を知った直後、幼なじみのシカマルの家に転がり込んで泣き叫んでいるこの状況。


「カ、カシせん、っ…!」
「あー、はいはい、」
「シカ、マルは知ってたの?」


思い出す度に涙が出てきて仕方ない。
面倒臭そうに大袈裟に溜め息を吐くシカマルを、鼻水をかみながら、ギっと睨んで意味なくイラつきの矛先をシカマルに向ける。


「ああ?そんなもん知るか」
「何その言い、方は!」


上手く息継ぎも出来ず、おかしなところで言葉が止まる。
シカマルをボカボカと殴る振りをすれば、両手首をぎゅ、と掴まれて、身動きが取れなくなってしまった。


「いたいっ!は、なして…」
「うるせえ」
「な…に」


急に真剣な表情になったと思ったら、シカマルが顔を近付けて来て、防戦本能で思わずぎゅ、っと目を瞑る。

身に何も起きないまま、恐る恐る目を開けば、あと少しと言うところでシカマルの動きが止まっていた。


「…やーめた」
「え…!?」


ぱ、と掴んでいた両手を離して、突然の展開に呆気に取られてしまった。
シカマルはそっぽを向いて、ベッドに寝転んでしまう始末。


「なに?え!今なにしようと…」
「涙止まっただろ?良かったな」


言われてみれば、シカマルの謎の行動に、驚きが勝って涙が引っ込んでいた。


「そんな汚い顔には出来ねえな」
「…え?」
「いや、何も言ってねえよ」





汚い泣き方
そんな顔ですら、可愛いと思ってしまうから。



101227.
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