何やら最近、彼は忙しいらしい。
元々そんなに一緒にいる訳ではないし、毎日会いたいと思う程寂しがり屋でもないと思っていた。


「あんたたち最近どうなってんの?」
「どうって?」
「カカシ先生と会ってんのかって聞いてんのよ」
「いや、全然?」
「えー!」


付き合いだしてから早くも一年は過ぎた。
初めは生徒と教師の実らぬ恋も、自然と惹かれ合ったわたしたちは、カカシの一言で交際がスタートした。
もちろん年齢もそう近い訳でもないし、サクラには頭が痛くなる程、正気を取り戻すようにと言われ続けた。
まだ納得はしてくれてないみたいだけど、何だかんだ言って結局一番応援してくれている。
けれど、そんな応援でもどうにもならないくらい、ここ二ヶ月位カカシとは会えていない。


「任務?」


心配そうに問い掛けるサクラに、良く分かんない、何て言ったらまた雷が落ちて怒られそうだから、適当にかわしてその場を去った。

でもさすがに二ヶ月間連絡も何も来ないのはおかしすぎる。
少々不安になったわたしはカカシの家を訪ねることにした。

とんとん、と戸を叩くと、少し間が空いて戸がゆっくりと開かれていく。


「あれ、ヒロイン、どうしたの?」


どうしたの、何てこっちの台詞なのに、いつも通りのやる気のない笑顔を向けるカカシに何も言葉が思い浮かばなくて。


「来てくれる何て珍しいね」


そう言って部屋の中に招き入れる。
戸を閉めて、何か飲む?と問い掛けるカカシをよく見れば、任務服は脱いでいて、部屋着のような物を身に付けている。
思い返せば、付き合ってから今まで任務服を着ていないカカシ何て初めて見る。
ああ、またそんなことを言ったらサクラに怒られそう。
正直なところカカシの部屋にだって、訪れたのは多分今日で三回目位だと遅くも今気付いた。


「最近忙しい…んですか?」
「うん、今まで長期任務に出てたけど、さっき帰って来たんだよ」
「そうなんですか」


久しぶりに会う恋人によそよそしい敬語を使う何て、もうわたしたちは駄目なのかも知れない、そう感じた。


「何で敬語なの?」


ふ、と鼻で笑って、腕を組む。
そんな姿が物凄く大人に見えて。
自分が幼く思ってしまってはもうどうにも出来ない。


「連絡しなくてごめんね、」


そう言って、わたしに近付いて来て、大きな掌で頭を撫でる。
目の奥から熱いものが込み上げて来て、頬に零れ出した涙に、自分でも驚いた。


「、なんで連絡くれなかっ…たの」
「長期任務に行くって言うと心配すると思ったから」
「だから、って…何もないと逆に、不安だよ…」
「うん、ごめん」
「わ、たし彼女だよ?」
「うん」
「もう少し、かまって…よ」
「うん」


ぽろぽろ流れ落ちる涙を、カカシはひとつひとつ拾ってくれた。
ただ、ごめんと繰り返すカカシが何を考えているのか分からなかったけど、わたしを大切に思ってくれていることが、手の温もりからも確かに伝わって来た。


「ねえ、」
「…何?」
「かまってあげようか?」


突然のカカシの台詞に思わず眉を寄せたと同時に、その大きな腕に包まれて、温かい唇がふいに当たる。


「、かまうってそう言うことでは…」
「我慢してたんだから、いいでしょ」
「え、待って、待って…!」


わたしの身体がふわりと宙に浮かび、カカシに支えられて行き場を無くした足が虚しくも宙を掻いていた。
そのまま、寝室へと向かうカカシの足を止める術はなくされるがままだった。



ねえ、遊んでよ
(いいよ、こっちへおいで)



101227.
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