目を覚ましてカーテンを開ける。
あ、今日は良い天気だ。何て、あおい透き通った空と壁に反射する太陽の光に眩しさを覚える。
重い体を起こし上げカラカラ、と窓を開ければほんの少しだけ冷たい風が起きたばかりの体を突き刺す代わりに、暖かい光が和らげるかのように優しく照らす。

しゃこしゃこと歯磨きをしている最中にふと考えることは、やっぱりあの人のことで。
そんな自分の頭に流石に嫌気が差す。
違う、間違ってない。
わたしがカカシとさようならしてきたのは間違いではないのだと、必死に言い聞かせる。
顔を洗い流し、鏡に写る自身を見つめて、大きく溜め息を吐き気合いを入れる。


二人で並んで歩いた道のりを一人寂しく歩く。
いつも隣で笑っていたあの笑顔も、今はもうどこにもない。
ふと隣を見てしまうのはカカシの温もりを忘れられないからだろう。
濡れてきた瞳を隠すように空を見上げ、鞄を背負い直して足を進める。


早く着きすぎたのか、教室の戸を開いても誰の姿もなかった。


「(なんだ、誰もいない…)」


もうすぐ学校を卒業をする学年で、わたしはいち早く進学先が決まり、学校には自由登校をしていた。
自分の席に座り、一息吐いたときだった。
ガラ、と教室の戸が開かれたのに反応して振り返る。


「お…はよ」
「…おはよう」


振り返った先には予想外なカカシの姿があって、同級生だしカカシが来ることは当たり前のことなのだけれど、珍しく早く来たカカシに二重の驚きを感じた。
思わず声をかけてしまったわたしにカカシは少し戸惑った様に挨拶をした。

席に向かうカカシの足音だけが教室の中で響いている。
けれど緊張しているわたしの鼓動の音も同時に聞こえているのではないだろうかと心配になる。

受験があるから付き合えない、と別れを告げてから二人きりになるのはどのくらい振りだろう。
それから何度挫けそうになったことか。
カカシの声が聞きたくて、カカシに触れたくて堪らなくなったこともあった。
それでもここまで頑張れたのはやっぱりカカシがいたからだった。



「ねえ、」
「…え、何?」


席に着くと同時にカカシが声を発する。
突然声をかけられ、戸惑いながらも答えるわたし。


「俺…進学先決まったよ」
「本当!?おめでとう!」


予想外の言葉に声を上げて喜び、振り返る。
けれど、カカシの表情は喜んでいる訳でもなく、一瞬ほんの少し寂しそうに見えた。


「カカシ…どうしたの?嬉しくないの?」
「俺たち戻れない?」
「…!」


言いづらそうに、重い唇を開くカカシ。
視線はわたしをとらえて離さない。
その真剣な眼差しにわたしは目を逸らせないでいた。


「それは…」


ガタン、と音を立て、カカシは立ち上がるとわたしの方へ向かってくる。


「え、なに…」
「昔、覚えてる?」
「…?」
「俺たちが小さい頃、ホットケーキを一緒に食べたよね」
「うん?」
「ヒロインがシロップをたくさんかけて、甘すぎて俺食べられなくなったの」
「そんなことあったっけ?」


腕を組んで、記憶を探る。
そんなことあったようでないような気がする。
気が付けばカカシはもう目の前まで来ていて、小さく笑ってわたしの頬を優しく撫でた。


「か…かし」
「けど、昔みたいに俺たちはもう子どもじゃないよ」


こんなことも出来る、と意地悪そうに笑って言って自分の唇をわたしの唇に優しく寄せた。


「ね?」
「…っばか!」
「ヒロイン、顔真っ赤だよ?」


卑怯だよ。そんな意地悪なことを言っているのに、そう言うカカシだって顔を赤くして照れているのだから。
大人になった、何てまだまだ言えないのに、いつまでも蜂蜜味に捕らわれて離せない。






シロップだらけのホットケーキ

(ねえ、続きしよ)
(ばかっ!何言ってんの!もう誰か来るよ!)
(…ケチ)
(てかお前ら何してんの、朝っぱらから)
(うわ、ナルト…!)
(ねえってばー何してたんだよー)
(言う訳ないだろ!)



110404.
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