「オレってば、意外に…じゃなくてやっぱりモテる!」


上忍待機所で任務を待つわたしに、朝から元気に騒いで来るのはこいつしか居ない。
上忍に成っても変わらぬ馬鹿っぷり。
年をとっても変わらぬその羨ましい程のプラス思考。
意外性忍者、うずまきナルト。

今日は男にとっても女にとっても、世間で言うラブ度が上昇する大切な日。
それをたかがチョコを二個貰ったぐらいで何をはしゃぐ必要がある?


「あー、はいはい、良かったね」
「何だよ、冷てえなあ」


別に冷めた性格では無いけれど、好きな男が、別の女にチョコを貰って喜んで居るのを見て腹が立た無い方が可笑しいと思う。
たかがチョコ。されどチョコ。
解っては居るけれど、ムカつくもんは仕様が無い。
そうか、わたしも良い年してこんな事位で怒る何て馬鹿げて居る。


「サスケ!お前チョコ貰った?」
「ふん、」
「うっわ!何だってばよ!それ!」


偶々通りかかったサスケを呼び止めればチョコを自慢しようとしたナルトが驚愕の声をあげる。
会話を聞くだけで、そちらを見なくてもサスケが圧勝なのは解りきって居る。
一応チラ、とサスケを見れば、抱えて居た大きな袋をどさ、と降ろす所だった。

わお…
女のわたしでも驚く程の大量のチョコの山。
流石のナルトも言葉を失って居る様だ。


「全く、どいつもこいつも朝からうるせえんだよ」


ぶつぶつ文句を漏らしながら椅子にどっと腰を掛けるサスケは、本当に迷惑そうな顔をして居た。
確かに朝からこれは迷惑かも…


「オレってば、二個しか貰ってないのに」


そう言って肩を落とすナルトを見ていると、まだナルトの方がマシに見えてしまうのが不思議である。


「ナルト、」
「え?」


はい、とナルトに差し出してあげたのはチョコの入った箱。
中身はきちんと一から作ったし、ラッピングも施した。
内心緊張して居るのは当たり前で、いくら何でも誤魔化す何て上手く出来ない。
もっと上手に出来たらこんなに苦労する事も無いのだろうか。

ナルトはそれを受け取って動きが止まったまま、反応を示さない。
心配になって顔を見上げれば、碧く澄んだ瞳がわたしを見つめて居る。


「…やべえ、嬉しい」
「…!」


どき、わたしの心臓は大きく脈打つ。
ナルトの笑顔に思わず引き込まれそうに成ってしまった。


「一番嬉しいってばよ」


に、と歯を出して笑うナルトに、そんな顔卑怯だよ、と呟く事しか出来ない。
こんなにナルトが好きだから。

わたしの両肩に両腕をす、と乗せる、ずっとガキ大将だと思って居た男の子はいつの間にか大人な表情で優しく笑う奴に成って居た。






(感じる程に高く高く、熱くなる。)




100214.
happy valentine.

END.
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