昔むかし、ずっと幼い頃。幼稚園の遠足に行った。それは毎年恒例行事で、目的地に着くまでは二人一組になって手を繋いで行く。遠足は毎回凄く楽しみで、買って貰ったお菓子をリュックに詰める事も楽しみの一つだった。


「あしたは!えんそく!」


何て、歌を唄いながら照る照る坊主を作り、雨が降らないようにと願いを込める。そんなわたしを見て、母親は忘れ物しないでね、と呆れた様にけれど優しい顔で笑って居た。


「さあ、みんな、ペアの子と手を繋いでね」


遠足当日、空は眩しい位に晴れ渡って居た。ウキウキ気分で家を出て行く。待ちに待った遠足の日。ぽかぽか陽気に包まれて体は暖かい。それ以上にわたしの頬も赤く染まって居たのかも知れないけれど。先生の一言で、ペアの男の子と手を繋ぐ。


「ん」


ただそう言って不器用に小さな手を差し出す。それを躊躇いながらもわたしは握り締める。ふと上を見上げれば、少し背の高い男の子が太陽と重なって、綺麗な銀髪がきらきら光って居る。眩しさに一瞬怯んでも、そのきらきらに、幼いながらもわたしの瞳と心は奪われて居た。


「どうかした?」


突然振り向いた男の子に、困惑しながらも首を横に降る。どきどき、と確かにわたしの小さな鼓動が聞こえる。


「きらきらしてるね」
「なにが?」
「かみのけだよ」
「これ生まれつきなんだ」
「いいな」
「どうして?」
「わたしはきらきらしてないもん」
「そんなことないよ、ほら」


そう言って、 わたしの髪を少し持ち上げて太陽に照らして見せてくれた。わたしの黒い髪は確かに太陽で光ってきらきらして居た。ほんとだ!とわたしが笑って言えば、でしょ!と自慢気に笑う。君が自慢気に笑う必要は無いでしょう、今ならそう言って誤魔化すのに。


「ヒロインちゃん、お歌うたおう!」
「うん!」


遠足は行くまでが楽しい。けれど、どうやって楽しむか何て、それぞれが考える事。その一言で二人はいっせーので、大声で歌を唄い出す。つられて周りの子どもも唄い出す。勿論、互いの手は握り合ったまま。





「ね、カカシ」
「ん?なーに?」
「今ね昔の初恋思い出した」
「え?」



嫉妬した?と茶化すと、カカシは違うよ、と言って頬を染めてわたしの手をきゅっと握り締めた。
少し冷え込む暗い夜の道を、二人並んで歩いて行く。月明かりが優しく導く光を頼りに。確かに繋がる指先は火照る事を知らない。朧気な記憶は、あわよくば今、隣を歩く貴方が君と同じ人ならばと言う淡い期待を抱いて。恋してた、君に。




(あ、ヒロインの髪、月明かりでキラキラしてる)

100206.

END.

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