日直って何でこうも面倒なのだろう。
日直は二人でするものなのに、今日休みやがったうずまきくんを本当に恨んでやる。
先生には日誌書き終わるまで帰るなよ、何てあんな白々しい笑顔で言われて、ああ、もう。
皆はわたしを置いて先に帰っちゃうし、友だちが苦しんでるって言うのに酷い奴らだ。
何て、放課後までにそれを書くことを忘れてたわたしが悪いのは充分分かっている。


「はあ…」


思わず口から零れた溜め息が、いつもは賑やかな教室に、重く響く。
何を書けばいいか全く分からない。
適当に書けばいいと友だちに言われても、何だかんだ言ってやっぱり適当は自分的に納得いかなくて。
頬杖ついて、進まない指先でペンをくるくると泳がせる。
外からは部活動をする生徒の声が、窓を閉めているこの教室にまで聞こえてくる。
ふと空を眺めれば、紅と橙色の混じった綺麗な夕日が優しく照らしつける。
眩しさに目を細めて、早く終わらせようとまたペンを日誌の上で走らせた。



ガラ、と教室の戸が開かれた。


「あれ、まだやってんの?」
「…あ、うん」
「ふーん」


顔を出したのは奈良くんで、わたしはなかなかこの人に慣れることが出来なかった。
クラスの友だちとは男女関係なく話すことが出来るのに、奈良くんだけはどうも苦手でいつも言葉がどもってしまう。
興味無さそうに軽く返事をしたあと、奈良くんは忘れ物をしたようで、自分の机に向かい、ノートを手に取っていた。

いいや、何か面倒だし、もう無視してよう。


「なあ、」
「…へ?」
「お前、俺のこと嫌いなの?」
「と、突然なに?」
「いいから答えろよ」


机の距離がこんなにもどかしく感じたことはない。
奈良くんの表情は暗くなってきた教室内ではきちんと見受けることが出来ない。
元々わたしの目が良くないことも原因だけど、ふざけているようには見えなかった。


「嫌い、ではないよ」
「…曖昧だな、その答え方」
「だって、好きではないし」
「うわ、お前、本人の前でよくそんな馬鹿正直に言えんね」
「んー、ごめん?」
「何で疑問形何だよ、」
「ははは、」


何だ、普通に話せる。
苦手だ何て勝手に思い込んでいただけなのかも知れない。
奈良くんは呆れたように大袈裟に溜め息を吐き、そのままわたしの机に向かってくる。


「つーかさあ、忘れ物してわざわざ戻って何て来ねえから」
「…?」


訳も分からぬまま、途方に暮れるわたしの机に手を置いて、じ、と見つめてくる瞳に思わず見惚れて。


「わざわざノートだけの為に戻って来ねえって言ってんだよ」


そう言って奈良くんはわたしの唇を簡単に奪っていった。


「気付けよ、バーカ」
「ええ…!」


微妙な距離のわたしたちの影が戸の方にまで伸びて、その関係を写すかのように戸惑うように並んでいた。


伸びた影
ひとつに重なり合って溶けていく




101226.
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