「昨日何処行ってたのよ」


子どものように我が儘を言うつもりは更々無い。良い歳した漢が、好きな女を独占する為に無言の怒りをぶつけるのなら、その方が子どものように思える。
オレの問い掛けに彼女は申し訳無さそうにごめんね、と謝罪の言葉を述べた。
昨晩、オレたちはいつもの様に会う約束をして居た。時間通りにオレは約束の場所に向かった訳だが、幾ら待っても彼女が姿を現す事は無かった。
事故にでも遭ったのでは無いかと、心配もした。一応、火影に確認を取りに行けば、彼女は任務を受けて居ないと言われた。事故に遭ったとは聞いていないとも言われた。
ならば、と家を訪ねてもチャイムが悲しく響くだけで、彼女は行方知れずに成ってしまっていた。
心配でろくに眠れていない朝、上忍待機所のドアを開けば、彼女が変わらぬ姿で上忍たちと他愛も無い会話で盛り上がって居たのだから腹の虫所が悪く成るのも当たり前だ。
だからこうやって、待機所の仲間が大勢居る前で静かに怒りを見せる。


「あのね、」


実はね、と言いづらそうにする彼女を見ていると、イライラしてしまって仕様が無い。何を焦っているのか解らないけれど、オレは彼女が浮気をして居るのではないかと、頭の隅で考えて居た。


「昨日時間通りに約束の場所に行ったんだけど、ナルトたちに絡まれて朝まで付き合わされちゃって…」


何?つまりオレを待っていたらナルトたちが来て、朝まで飲みに付き合わされたの?あいつら今日会ったら絞める。
その前に、浮気ではないかと考えてしまったオレの方が重大だ。彼女が浮気をする何て有り得ない。そう信じて居た筈なのに、そう思ってしまった自分にも腹が立つ。


「本当にごめんね」


彼女はそう言って泣きそうな顔をしてオレを見つめる。やめろよ、そんな顔しないで。
横に居た仲間に、カカシ何泣かせてんだ、とからかわれたのを五月蝿いと軽くあしらって、彼女を自分の腕で出来るだけ優しく抱き締める。
彼女はぴく、と一瞬反応してから、こんな所で何?やめて。とオレを振り払おうとする。だが、オレはお構い無しに彼女をぎゅ、と更に強く抱き締めて、その首筋に鼻を埋める。マスクをした上からでも彼女の甘い匂いはオレの鼻を擽っていく。


「お前さ、親指くらい小さくなりなよ」
「…何で?」
「オレのポケットに入れとくから、そしたらオレのずっと傍に置いとける」


オレは本気で言っているのに彼女は笑って、そしたらわたしカカシの為にご飯とか作れないね、何て言い出した。


「…いいよ、オレが全部やってあげるから」


そう、だからオレだけの親指姫になってよ。








100129.

END.
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テーマ「人外ファンタジー」
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