昔から常に一緒だった。
兄妹のように何処に行くのも手を繋いで歩いて、あいつは「大きくなったらおヨメさんになる」とか可愛い事を言っていたのに、今となっては360度、その関係は変わってしまった。
自分にとっての過去は過酷過ぎた。
それでも、あいつが居たから頑張って来れたんだ。
妹の様に可愛がっていた筈が、いつからか妹ととしてではなく、ただの一人の女としか見れなくなってしまった。

明日、最後の長期任務に出る。
火影になる事だけを目指して、夢見て来た。
それが、この長期任務の後、叶うのだ。
とは言ってもまだまだ若い、一の忍。
不安がない訳では無い。
それでも、沢山の人たちの希望を背負い、四代目火影たちが守って来た里を、未来へと繋いで行くのも自分の役目だと決心した。
やっと念願の火影になれると言うのに、心が浮かばれないのは、好きな女に気持ちを告白する事が未だ出来ていないからだと思う。

長年暮らして来た部屋の中で、男寂しく一人、長期任務の準備を進める。
忍具の数を幾度と数えては確認し、使い古したポーチに、いざと言う時の為に取り出し安い入れ方に変えていく。

夜も更け、昼間は賑やかに走り回っていた子どもたちも既に寝静まり、静寂だけが部屋の中を包んでいく。
窓の隙間から柔らかな風が入り込み、少し伸びた襟足が首を擽っていく。

ピピピ、と腕に挟んでいた体温計が終了の合図を知らせる。
幼き頃、カカシ先生に散々言われ続けた体調管理。
今となっては体調管理がどれ程大切なのか痛い程理解している。
長年かけて引き締めた二の腕の脇から体温計を取り出し、後で確認すればいいやと、画面を見もせずに放り投げる。
成長しているのか、と問われれば、していないだろうなと感じるのも無理は無い。

ほんの少し肌寒さを感じ、窓を閉めようとギシ、と音を立ててベッドから立ち上がる。


「ナルト、」
「お前…何で」


窓に手をかけ、ふと外を見れば、いるはずのないあいつの姿があった。
小さく手を振るそんな姿に思わずオレの中で何かが割れて、理性までも吹っ飛ばした。
窓を思い切り開けて、下へと飛び降りる。


「ナルト、背伸びたね」
「…こんな所で何してるんだってばよ」


久し振りに見る彼女が、大人びているように見えるのは月明りのせいだろうか。
あの頃と変わらない柔らかい笑顔で、オレの視線を捉えて離さない。
身長だって、昔はさほど差は無かった筈なのに、今ではオレの方が10センチはデカいだろう。
彼女はこんなに小さかっただろうか。


「火影になるって聞いたから」


そう言って、照れたように髪を耳にかける。
この癖は昔から変わらない。


「わざわざ言いに来てくれたのか?」
「うん、おめでと」
「ありがとだってばよ」


彼女の頬に優しく触れると、微かに怯えた様にびく、と反応を示す。


「ナル…ト」
「オレってば、単純だからな」


彼女の体を自分の腕で包み込んで、有無を言わさず抱き締める。
幾らオレでも緊張しない訳が無い。
心臓が破裂しそうな位に高鳴り、顔は茹でた様に熱い。


「…心臓凄いよ、ナルト」
「うるせえ、緊張してるんだってばよ」


ふふ、と確かに微笑んで、オレの背中に手を回して、ぎゅ、と抱き締めてくれる彼女に、体温は一気に急上昇していく。


「やっと言えそうだ」
「何を?」

「お前が好きだってこと」


平熱で対応出来るならば苦労はしない。
やっと言えた言葉にも、心臓が一緒に出てしまいそうだ。




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100810.
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