とくん、とくん。
体内で一定の間隔で響く小さな音。近くでしか聞こえない音。
あなたの音。こうやって抱きしめ合うから、あいしあうから聞こえる音。
わたしの音と混ざり合って心地良ささえも感じる。
それは徐々に早まることを知らない。
落ち着かせる技何て知る由も無い。
あなたから確かに受け取る愛情は、常にわたしの隣にあって、共にあなたに注ぎ続ける。
これが一方通行になることは無い。
寧ろあってはいけない。
だってあなたとわたしで一つ。
片方が消えて無くなれば、もう片方は息も出来ずに藻掻き苦しむしかないのだから。


「か、かし」
「なに、?」


吐息を僅かに弾ませる。
温かく優しい声を耳元で囁くのはこの人のお得意な行為。
柔らかい白銀の髪先が頬に当たる。
両方から得る擽ったさに身を捩って、わたしは過剰に反応してただ酔いしれるだけ。
絡み合う指先には自然と力が入る。
それに気付けば、カカシも握り返してくる。
わたしを見下ろすその瞳が、微かに濡れている様に見えるのは勘違いだろうか。


「か、…かし」
「、ん」


名前を呼べばカカシの薄く整った唇がわたしの鼻先に優しく触れる。
首筋に這わせた唇で強めに吸われれば、自然と身体は反応する。
息を吐けば、吸い込むことを忘れそうな位呼吸が難しい。


いつか、この温かさが冷めて冷たくなってしまうんじゃないかと思うだけで、目の前が真っ暗闇になりそうなのに。
何度言葉や行為で愛を確かめ合ったとしても、運命は変えられない。
人間には生がある限り常に死とも隣り合わせ。
忍の世界は、死の世界と薄い壁でしか分けられていないのだから。
明日、この人が任務で命を落とすかも知れないと思うだけで、涙が溢れて仕方無い。
強くいよう、そう決めたとしてもこの笑顔が見られなくなると思うと弱くなる一方で。
「一緒に居たい」そんな些細な願いさえ、儚く崩れることは分かっていた。
小さく頷くカカシの気持ちも痛い程伝わる。


「…好きだよ」



カカシの低い声が脳内に響き渡り、気が付けば、隣には誰の姿も無い。
カーテンの隙間から入り込む、自然の節理に乗っ取って、再び顔を出した太陽の暖かい一筋の光に、一瞬目を細める。
温もりさえ残らないベッドに手を這わせれば、残るのは虚しさだけ。

目が覚めれば、またあなたの居ない朝が始まる。

わたしは動き続けるから、年を取ってあなたを追い掛けるよ。
いつか同じ所に行って、シワシワになったわたしでも分かってくれますか。





心臓


100530.
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