幼なじみの火田伊織くんと氷見友樹くんは、贔屓目なしに見てもモテモテだった。
 伊織くんは知的な見た目のとおり成績優秀だし、小さな頃から剣道をやっているから運動神経も良い。更にはとても真面目で誰に対しても優しい。皆を引っ張るようなタイプではないけれど、その場にいてくれるだけで落ち着く、安定感がある人だ。
 友樹くんは、背は低いわけではないけれど、とても可愛い。表情も、仕草も、一つひとつに女の子の庇護欲をくすぐる何かがある。上目遣いで「だめ?」なんて言っているときなんて、そこら辺の女子よりもあざとい。
 でも、この二人に挟まれて育った私はとても平々凡々としていた。

「ねえ、また二人の連絡先教えてほしいって言われちゃったんだけどさ」

 小学校の頃から続く習慣の通り、私たちは夕暮れの道を三人で歩いて家路へと向かう。
 昔は三人横並びだった影法師が、今では真ん中の私一人だけ小さい。

「あ、そうなんだあ。やっぱりボクたちってモテるね、伊織くん」
「僕はあまり、そういうの興味ないんですけれど……、その手のって、いつもさん経由ですね」
「たしかに! 伊織くんファンは、奥ゆかしい子が多いんだよ」

 普段から気さくで話しやすい友樹くんとは対照的に、伊織くんには近づきがたい独特のオーラがある。だから、伊織くんファンはそっと影から見守ってる文学少女みたいな子が多いんじゃないかなあ、という私の勝手な想像。

「ボクは直接聞かれたりするよ? 携帯の番号」
「友樹くんファンは、何か違うじゃん」
「そうなのかなあ」
「友樹くんは親しみやすいですよね。可愛いともよく言われていますし」
「えっ。ボクってぇ、やっぱり可愛いのかな……?」

 友樹くんはそう言って、両手を頬に当てて小首をかしげる。……う、うわあ。

「あざとい、あざといよ!!」
「きっと、あえてこういった発言をすることによって、女性の母性本能をくすぐろうという作戦なのでしょう」
「い、いやそんな真面目な分析しなくていいから!」

 キリッとした顔で答えてるけど伊織くん、わざわざ言わなくていいから。真面目すぎるから。
 友樹くんは、小さい頃は私や伊織くんの背中に隠れているような泣き虫さんだったのに、いつしかこんなことを平然と言えるような子に育ってしまった。幼なじみとしては悲しい。

「で、でさ、連絡先どうする? 教えていい?」
「んー、ボクはちゃんに悪い虫が付かないように見てないといけないじゃん」
「……では、僕も遠慮します。友樹くんが心配なので。色んな意味で」
「……」

 悪い虫が付くって何。友樹くんは確かに年々あざとくなってるけど心配って何。
 ごめん、と二人は謝った。けれどこの二人は、同い年の女の子に全く興味がないんだろうか。
 二人はとてもきらきらしている。そんな素敵な二人と、幼なじみというだけの私。住む世界が違うと思っていた二人は、何年経っても変わることなく、私の歩幅に合わせて、私の隣を歩いている。

「……不思議だなあ」
「何がですか」
「二人はすごいのに、その気になればハーレムを築き上げられるのに」
「……ちゃんもたまに真面目な顔で下品なこと言うよね」

 友樹くんが乾いた笑いを浮かべる。横顔の伊織くんは、少しげんなりしている様子だった。

さんは男の子の友達欲しいんですか?」
「え、そりゃいたらいいなって思うけどど……何で?」
「伊織くんは、ボクらを差し置いて他の男の子と遊びに行くなんて寂しいよ! って言いたいんだよ」
「友樹くん、僕はそこまで言ってませんけど」
「でも要するにそういうことでしょ?」
「……」

 あ、これは訂正するの面倒だなって顔だ。伊織くんは呆れてため息を付く。
 もう、友樹くんは適当すぎる。

「……私も、二人といたらしばらく彼氏できないような気がするなあ」
「大丈夫。そうなったら伊織くんが貰ってくれるから」
「えっ。伊織くんファンに殺されない!?」
「僕もさんみたいに単純な子はちょっと……。友樹くんが貰ってくれますよ」
「ん〜、ボクは可愛い路線で売ってるから困るなあ」
「結局二人とも、押し付け合いしてるだけじゃん!!」

 両隣の二人は、次から次へと勝手なことを言い合う。こうなってしまった二人に挟まれちゃ、きっと何を言い返してもダメだ。私の顔は、きっと顔真っ赤になっているだろう。
 ーー幼なじみの火田伊織くんと氷見友樹くんは、モテモテだけど、私に対しては意地悪だ。



(気づいてないんだろうなあ)(でしょうね)


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150926
伊織と友樹に好かれるシリーズが読みたいので自給自足……^o^


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