The Last Element
月の破片が隕石となり飛び散る。そして、残された赤の月、青の月が、砕けていく。[1/3] 光と闇を一つに! 輝一最後の願い 「みんな、大丈夫か!?」 「……何とかね」 「あー、よかったねえ」 宙には黄色の月、赤の月、青の月すべての破片が舞っている。 そして、デジタマもーー。 「月が、なくなってる!」 「拓也ー!」 「輝二ー!」 二人の姿は見当たらない。 わたしたちは、残された黄色の月の断片のうえで、二人を探し求める。 「生き残っていたデジモンたちが、データをスキャンされてしまったんじゃ」 すべての月がこうなってしまった今、生きているデジモンはきっともうこのデジタルワールドのどこにもいない。 それを思うと、ますます心が重く苦しくなった。 純平さんは「まさか、二人共ルーチェモンに……?」といやな想像をしていた。けれど、そうではなかった。 「あ、あれ……!」 「皆……!」 友樹くんが指差す方を見る。すると、そこにはパタモン、プロットモン、ロップモンが菱型の結界を作り、その中に護られる形で輝二くんと拓也くんがいた。 菱形は飛んで行き、わたしたちのいる月まで降り立つ。 「皆無事か!?」 「それはこっちのセリフだぜ、よく無事だったな」 「よかった、二人とも……怪我、してない?」 「ああ、大丈夫だよ。ありがとう、想」 輝二くんにありがとうと言われて、胸がぎゅうっと締め付けられた。 ずっと、悲しくてつらくて、けれど輝二くんと拓也くんたちはこの世界すべての為に戦ってくれていて。 パタモンたちが、攻撃から護ってくれたから輝二くんたちは無事だったようだった。皆は、さすが元三大天使デジモンだと感心している。 「……けれど、それよりルーチェモンは!?」 拓也くんが言った。 * 「ルーチェモンの強さは半端じゃ無いぜ、」 「まともに戦っていても、勝ち目があるかどうか」 「何か勝てる方法はあるさ。みんなで、作戦を考えよう」 「うん、そうだね。何か……弱点を探そう」 わたしがそこまで言った時、ふとこの場に双子くんがいないことが気になって視線を動かす。 輝二くんと輝一くんは、二人で離れたところにいて話し合っていた。 オファニモン様の城での輝一くんを、泣いていた彼のことを想う。 二人は、今きっととても大切な話をしている。ーーわたしは、その場には行けない。 輝二くんは、この世界のすべてを背負って、戦っている。 輝一くんは、生と死の瀬戸際で、輝二くんは知られまいと苦悩している。 ーーそしてわたしは、ただその二人の背中を見ているだけだった。 皆は、進化したルーチェモンについて話していた。 ルーチェモンは天使デジモンだったのに、今では天使と悪魔、背反するふたつの姿を併せ持った進化を遂げてしまった。それはすなわち、光と闇だった。そして、その戦いの核となるのは……。 「二人と、そして……」 「わたし、だね」 「想!」 わたしは自分のデジヴァイスを握りしめ、みんなのもとに近づいた。 光と闇がひとつにならないといけない、そして、それには色が関わっているーーとプロットモンは言った。 色は光がなければ感知することができない。そして、闇がなければ色を描くことはできない。だから、光と闇、そして色は密接な関係にあるのだと思う。 「でも、三人が鍵を握っているって、一体どういうこと?」 「わかんないー」 「……わたしも、分からない」 デュークモンさんはもしかしたら、何か知っていたのかもしれない。けれど、彼はわたしたちにそれを教えることなく姿を消してしまった。 泉ちゃんは、遠くで話している二人の方を見た。「あの二人、何を話しているのかしら、深刻な顔をして……」 「ロードナイトモンに言われた、あのことを気にしているのかもしれないな……」 「あーあ、それ誰にも言わないでって」 すると、ボコモンはぎくりとした。 そうだった。このことを知っているのは、ボコモン、ネーモン、そしてわたしだけだった。 「おい、ボコモン。ロードナイトモンに何を言われたって?」 「……想も、何か知っているのね?」 「あ、う、うん……」 泣きそうになっているわたしの表情に気付いた泉ちゃんが、問いかける。そして、心配そうにわたしの背を支える。ーーちがう、わたしなんかより、輝一くんのほうがつらい。そんなこと分かっているのに、どうしてわたしは泣きそうになるんだろう。 「……輝一はんは、ずっと悩んでおったんじゃ。これまでの戦いで、一人だけ、デジコードが出なかったことを……」 「デジコードが……?」 ボコモンの隣で、わたしはこくんと頷く。 そしてボコモンが輝一くんのことを話すなか、わたしは図書館での輝一くんの涙と、彼に抱きしめられたことは言えずにいた。 「ロードナイトモンが言ったんじゃ、お前は魂だけの存在じゃと……」 「あのことも、関係あるのかな。ボクたちはトレイルモンに乗って、デジタルワールドに来たけど、輝一さんは、覚えていないって言ってた」 駅の階段から落下した。わたしは、そのことを知っている。でも、わたしは、今そのことをここで口にするのが恐ろしかった。 「……あいつ、ずっと悩んでたんだな」 「うん。わたし、も、どうしたらいいのか、分からなくて……」 「想……。何か、できることを探そうぜ。輝一のために」 拓也くんはそう言うと、わたしの背を叩いて励ましてくれた。 わたしは、あの時オファニモン様の城で、輝一くんにはすべてを話してほしいなんて言った。けれど、わたしは拓也くんたちに輝一くんのことをーー、輝一くんが、自分の死を覚悟している、なんてことをーー話せるわけがなかった。わたしは、卑怯だった。 NOVEL TOP ×
|