触れられない光
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五闘士全滅!? 恐るべき闇のパワー!
 現れたのは、闇の闘士ダスクモンだった。彼の紅い瞳が怖い。
 何故か思い出してしまうのは、輝二くんによく似た男の子の姿だった。光の反対は闇だから、そんなあり得ない姿が頭をよぎったのか――、それは分からなかった。とにかく、わたしはダスクモンが恐ろしくてならなかった。
 アルボルモンを倒したダスクモンは、ハクジャモンに近づく。未だにスピリットを二つ揃えていないハクジャモンも、必要ない存在なのだとダスクモンは言った。


「がッ……!」


 ダスクモンがハクジャモンを打つ。打ちどころが良かったのか、アルボルモンのように一撃で消えはしなかったけれど、それでも深いダメージを負ってしまったようだった。ハクジャモンはばたりと地に倒れこんだ。ーーハクジャモンも、殺されてしまうのか。更に怖くなって、指先の血が抜けていくような感覚がした。


「私を、倒す気でいるの?」


 ハクジャモンの問いに、ダスクモンは何も言わなかった。その代わり、とでも言うように、ダスクモンはわたしを見た。


「人型の色の闘士は、あの娘か」
「……ッ!」


 血を透かしたかのような紅い瞳。わたしは本能的に彼を、彼の闇を拒絶しているのだと分かった。
 ヴリトラモンたちは、わたしをかばうように前に立ちはだかる。


「お前は一体誰なんだ!」
「俺の名は、闇のダスクモン。……お前たちの力、見せてもらおう!」


 そう言って、ダスクモンは刃をわたしたち側に向け空を切り裂く。彼の刃と同じ紅い光の衝撃波が、こちらに向かってくる。


「想ッ!」


 わたしは、ヴォルフモンに身体を掴まれて、ボコモンとネーモンが隠れる木陰に下ろされた。――衝撃波の跡の大地は抉れていた。


「ヴォルフモン、ありがとう……!」


 本当に、助けられているばかりだった。
 わたしは木につかまり、荒い息を抑えようと呼吸を繰り返す。想はん大丈夫かいな、とボコモンが心配する。


「敵はダスクモン一人だ! 俺たちはペタルドラモンを倒したんだ、あんな奴に負けてたまるか!」


 ヴリトラモンはそう言うと、ボルグモンに援護を指示した。何も出来なくて、見ている自分が悔しかった。けれど、恐怖で足が動かない。ボルグモンが必殺技をダスクモンに放ち、その力でダスクモンは煙幕に包まれ何も見えなくる。そこにヴリトラモンが突っ込んでいく。良い戦略であるかのように見えたけど、ダスクモンは避けて、ヴリトラモンは大地に投げ出された。


「うわあっ」
「ヴリトラモン!!」
「どうした。見せてみろ、お前たちの力を!」


 ダスクモンは素早かった。ヴォルフモンは獣型でもパワータイプとしてのイメージが強いボルグモンとブリザーモンを、人型になるように言う。ヴリトラモンは倒れたままだった。
 ヴォルフモンがダスクモンに向かって直進し、刃をぶつけ合う。光と闇なんて、正反対すぎて戦いにくいだろう。
 色というのは、光と闇を合わせた力のことらしい。今、わたしがここで色の力を使えたら――。わたしは悔しくて、デジヴァイスをきつく握りしめた。


「……私が色の力を使えたら」
「……ハクジャモン!」


 気付けば、隣にはハクジャモンが立っていた。ハクジャモンも同じことを思っていたのかわたしの心を読んだのか、わたしと同じような意見を述べた。


「色は光と闇をどちらも持っていて、更にその先にある漠然とした物。さしずめ、色の闘士は善悪の彼岸ってところかしら……」
「ぜんあくの、ひがん……?」


 ハクジャモンの言葉は難しくて分からない。ボコモンもううむ、と腕を組み考え、ネーモンはもちろん分かるはずもなく眠りかけている。


「彼岸であるというのに、私は悪の闘士なんて皮肉よね」
「え、そう思っているなら、何で……!」
「何だろね。あ、闇が消えたわ」


 そこでわたしは再びダスクモンへと視界が映る。ハクジャモンの意味深な言葉が気になった。だけど、それよりも気になるのはやっぱりヴォルフモンたち――、輝二くんたちの安否だった。
 皆の攻撃を避けたダスクモンは、空に浮かんでいた。全く効いていないなんて――!


「ガイストアーベント!」


 ダスクモンが攻撃を放つ。みんなはなんとか逃げきることはできた。けれど、力の差が圧倒的すぎる。四人で戦っても、ダスクモンに敵わないなんて――。


「お前たちの力とは、この程度なのか!」
「なめるなよ、目玉野郎……! そんなに言うなら見せてやるよ、オレたちの力を!」


 傷ついたヴリトラモンが、ゆっくりと起き上がる。ヴリトラモンは、ダスクモンを睨みつけてから、炎をダスクモンに放った。
 ダスクモンが燃える。ヴリトラモンはやったぜ、と声を漏らすけど、ダスクモンは恐ろしいほどに強い。こんな炎くらいじゃ倒れないんじゃないか、と思ってしまった。
 事実、ヴォルフモンたちは移動を始めていた。シューツモンが「想、行くわよ!」と言ってハクジャモンの近くにいたわたしを拾い上げる。ハクジャモンはシューツモンに攻撃をしようとしたけど、ダスクモンにやられた傷どうにも身体が動かないようだった。


「退くぞ、ヴリトラモン!」
「何言ってるんだよ、奴は今オレが――!」
「あの程度で、あいつが倒れるとは思えない! だから、今は退くんだ!」


 ヴリトラモンは不満そうだったけど、ヴォルフモンたちは走り去る。ヴリトラモンも、仕方がなくヴォルフモンたちを追いかける。わたしは、シューツモンに抱えられながら、炎に包まれた闇の闘士を眺めていた。


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