彼の刃がわたしの闇に
「う、うわあっ」[3/3] 少し歩くと、突然目の前が煙幕に包まれる。何事かと思って目を開くと、そこにいたのはアルボルモンとハクジャモンだった。 暗い林の中から姿を現した二体は、いきなりに攻撃を仕掛ける。――そのせいで、ピピスモンはやられてしまう。 「ひどい……!」 「次はお前たちの番だ! アルボルモン、スライドエボリューション!」 「あ、色の子、スピリットちょうだい」 「あげないよ!?」 ペタルドラモンは辺りを荒らし始め、ハクジャモンはわたしを追う。こうなったら、進化して戦わなくちゃいけない。わたしたちは、デジヴァイスを構える。 「スピリット・エボリューション!」 わたし以外の皆はビーストデジモンになっていた。わたしだけがシキモンになったことに、申し訳なさを感じる。 ペタルドラモンはうめき声と共に舌を出し、木を平らげる。一体何の意味があるんだと思っていたけど、木を食べることによってペタルドラモンの姿は大きく変貌してしまった。 「うわああっ、更に大きくなりおったぞ〜!」 「いいな〜」 元々大きなペタルドラモンが更に大きくなってしまった。ハクジャモンはそれを見ながら「木の闘士だから木を食べて大きくなるんだね」と、わざわざ説明しなくても分かるようなことを解説する。 「ええいハクジャモン、覚悟!」 シキモンはハクジャモンに向かっていく。ハクジャモンはゆるやかに回避してしまった。シキモンのわたしは、力任せにハクジャモンに突撃しようとしたけれど叶わなかった。むしろみぞおち辺りにドスッと一撃を喰らわされ、一瞬進化が解けかける。ま、まずい! ペタルドラモンも、木を食べて強くなってしまったためか、攻撃をすっかり受け付けていないかった。場所によって、闘士には戦いやすさの向き不向きがあるのか。 「サウザンドスパイク!」 「うぐっ」 その攻撃により、ヴリトラモンとシキモン以外の闘士はつるのような物で締め上げられてしまう。締め上げられてしまうのを下から見上げていたハクジャモンも、何か攻撃をしようと爪を高くあげていた。 「リーフサイクロン!」 「フレイムストーム!」 ヴリトラモンの火力よりも、ペタルドラモンの葉の風が強かった。六闘士は吹き飛ばされ、身体が大地に打ち付けられる。 「人間のお前たちに、六闘士のスピリットなど猫に小判! さあスピリットをよこせ!」 「わたしも便乗。色のスピリットを渡してほしいのよ」 渡す、わけがない。闘士たち全員は、力を振り絞り立ち上がる。 ガルムモンがペタルドラモンに必殺技を喰らわせた。怯んだ所を見計らって、ブリザーモンがペタルドラモンを押さえ、ボルグモンが砲口をペタルドラモンに焦点を合わせる。 「ウオオオッ」 悲鳴をあげるペタルドラモンを、ブリザーモンが背負い投げをする。きれいな連帯技が出来ていた。 「フレイムストーム!」 「ウィンドオブペイン!」 「苦無乱舞!」 ヴリトラモンたちも負け時と、技を放つ。ヴリトラモンの炎が風に乗り、その中をクナイが舞う。その三つの力が合わさった技は、ペタルドラモン、ハクジャモン二体の方に向かって進んでいた。 ハクジャモンにコードが浮かび上がることはなかったけれど、ヴリトラモンたちの攻撃以前にも技を喰らっていたペタルドラモンは耐え切れずにコードが浮かび上がる。 「闇に蠢く魂よ、聖なる光で浄化する! デジコード・スキャン!」 スキャンしたのは、ガルムモンからスライド進化したヴォルフモンだった。このスキャンによって、ペタルドラモンはアルボルモンに戻る。 「降伏するか、浄化されるか――どっちがいい」 「木、逃げたほうがいいわ」 ハクジャモンがアルボルモンに告げる。後ずさりするアルボルモンを、ハクジャモンがその身体を持ち上げようとしたときだった。 背後から、真っ黒なデジモンが現れた。身体の至る所には真っ赤な目玉が付いている、恐ろしい人型のデジモン――。 「ダスクモン」 アルボルモンがそのデジモンの名前を呼ぶ。奥歯が揺れるような感覚に陥る。――気付けば、わたしの進化は解けていた。 「想!」 みんながわたしを呼ぶ。 わたしがずっと恐れていたのは、きっと彼だ。闇の大陸も怖かった、けれどそれよりも異質で恐ろしい存在。わたしは不意に、以前夢で見た輝二くんみたいな男の子の姿を思い出した。あり得ない、と分かっているのにその男の子の姿が頭から離れない。 「加勢しに来てくれたんだな、持つべきものは友だ……」 「ビーストスピリットを失ったお前は、もはや足手まといだ」 「う!? 昨日の友は今日の敵……ッ!」 無残にもダスクモンはアルボルモンをロードしてしまった。ロードされたアルボルモンのコードから、デジタマが現れて空に還っていく。 アルボルモンが亡くなったことにより、ハクジャモンの横顔が、一瞬恐怖に満ちたものとなる。――でも、それはすぐになくなった。 「闇。仲間に攻撃をするのは良くないわ!」 「スピリットが一つなのは、お前も同じだろう。――次は、お前だ。ハクジャモン」 「……っ!」 ハクジャモンが震える。 わたしはただひたすらダスクモンの瞳の、血を透かしたような紅が怖かった。 120712 オリジ回よりも先に書き上げてしまった/(^o^)\ NOVEL TOP ×
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