壊れた夕暮れは振り返らず
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「水、こういうのは集団リンチしたほうが手っ取り早く倒せるわよ」
「はあ!? じゃあアンタも動きなさいよ!」


 ガルムモンに攻撃を仕掛けようとしたラーナモンに、ハクジャモンがノンキに指摘する。
 ハクジャモンはといえば、さもやる気がなさそうにラーナモンを援護している。


「レインストリームッ!」
「なっ……」


 ラーナモンが放った水が、シキモン目がけて飛んでいく。今フライモンと戦っていて、一番体力を消耗してそうなのはシキモンだからだろう。
 シキモンは危機を感じ、跳んだ。シキモンは自分が避けた水の塊は木に当たるだろうと考えていたが、違った。ガルムモンが水に体当たりしたのだ。


「ガルムっ……!?」


 ガルムモンは、自分の体ごとフライモンの群れに突っ込んでいく。ガルムモンと何体ものフライモンが水圧に打たれた。
 何故自分の身を呈してまで――。と考えて、シキモンは一つの考えに思い当たった。おそらくガルムモンは、水を浴びたフライモンに、ブリッツモンの電撃を喰らわせるのが目的だ――。シキモンの読み通りガルムモンは、背後のブリッツモンに目配せしてから自分は後ろに下がった。シキモン木の上に飛び乗る。


「アルティメット・サンダー!」
「スパークリングサンダー!」
「ギャアアッ!」


 そして電撃が轟く。しかしフライモンに電撃を浴びせたのは、ブリッツモンだけではなかった。
 ガルムモンの意図を読んだブリッツモンと共に、隻眼のエレキモンがフライモンに向かった体当たりをするように電撃を喰らわせた。水に濡れたフライモンたちに、再びビリビリと電撃が襲いかかった。


「この地を守るんだ。俺は再びやり直してみせるぜ」
「エレキモン……!」


 いきなり戦闘に参加してシキモンが唖然としていると、エレキモンは静かに語った。――壊れてしまった自分の地を、守る。小さな身体で敵に挑むのは、どれだけの覚悟がいるのだろうか。シキモンは――、想はその背中を木の上から見つめて、ならば自分もその覚悟に応えられるようにしようと思った。
 フライモンたちの動きが鈍くなったところに、更に追い打ちをかけるようにシキモンが前へ出る。


「か、勘弁してくれぇー! オレたち、本当はお前らと仲良くしたいんだよお!」
「な、何ばかなこと言ってんのよ! 早くやっつけちゃいなさい!」
「問答無用! 色即是空ッ!」
「うわああっ! ち、ちくしょーっ」


 フライモンたちが、黒い煙に包まれる。――それが明けると、フライモンたちにはコードが浮き出ていた。


「世情に流されし魂よ! 己があるべき色に帰依するがよい! デジコードスキャン!」


 ――シキモンと想にとってはじめてのデジコードスキャンだった。スキャンすると、フライモンたちは黄色い芋虫のようなデジモン、クネモンへと退化した。
 想も進化を解いて、つかれたあ、とため息を吐きながらその場に座り込んだ。


「ああもう、使えないわね!」
「水、今日はもう帰ろう」


 苛立つラーナモンに、ハクジャモンは帰宅を促した。先ほどと同じように、今度はラーナモンめがけて電撃が放たれるかもしれない。水の力を使う彼女には、不利な状況だった。
 ラーナモンは反撃したそうにハクジャモンを睨むが、何も言い返すことができずに「覚えてなさい」と言って走って行ってしまった。ハクジャモンは、その後ろ姿を追いかけて去った。



*
「た、助かったー!」
「もー、わたしくたくただよ……」


 手をあげて喜ぶ純平さんを見上げてから、ため息を付いた。今日はわりと頑張った気がするよわたし。


「ははっ! あいつら見事なまでの捨て台詞吐いてったぜ」
「だが油断は出来ないな、エレキモン、大丈夫なのか」
「心配いらねえよ。これからは俺が守って、やり直していくんだ」


 エレキモンさんの水色の瞳が輝く。やり直す。そうか、わたしも再び頑張らなくちゃいけない。自分が、変わるために。


「おーいっ、輝二たちー!」
「想、無事だった!?」
「あれ、みんなこんなところにいたんだ!」


 遠くからは、拓也くんたちが走ってこっちに向かってきている。場所、分かったんだ。再び皆の姿を見て、わたしはとても安心した。
 いつの間にか、空は日が沈み掛かり、うっすらと三つの衛星が見えるようになりつつあった。



「エレキモンさん、さようなら!」


 わたしはエレキモンさんに大きく手を振って、沈む太陽とは真逆の、拓也くんたちがいるほうへ足を動かす。
 そうして再び新たな地を目指して、わたしは歩き始めた。





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・フロ前期EDのあの場所イメージ。
・夢主にデジコードスキャンさせたかった
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