綿津見も知らない
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「ぶ、ぶふっ」
「……このっ!」
「おどき!!」


 笑うハクジャモンと、フェアリモンをカルマーラモンはぶった。
 それによってハクジャモンの手から、わたしのデジヴァイスが抜け落ちる。それはフェアリモンの近くにあって、フェアリモンにはカルマーラモンが近づいてきていて――。


「色の人型のスピリットも欲しいけど。……まずはそこのナマイキな女から始末してあげるわ! それからハクジャモン、あんたはただじゃ済まさない!」
「ぶふっ」
「どんだけ笑ってるのあのデジモン、気持ち悪……!」


 ぶたれて、飛ばされてもなおハクジャモンは笑っていた。ブキミだよ、笑いのツボにハマりすぎだよ!

 フェアリモンは追いつめられて、起き上がることができない。
 カルマーラモンはとどめよ、と言って跳ね上がる。――このスキにわたしがデジヴァイスを取って、進化すれば!
 わたしは走りだした。


「タイタニックチャージ!」


 来る……!
 カルマーラモンはぐるんぐるん回る。わたしも走って、デジヴァイスを取ろうと走る。走ったら、転んだ。……もう、間に合わない?


「って。あらららら!?」
「あ、水、お待ち」


 でも、いつまでも攻撃が降ってくることはなかった。顔を上げてみれば、カルマーラモンはとんでもない方向に飛んでいって、見えなくなってしまった。ハクジャモンもノンキにそのあとを追っていく。
 ……カルマーラモン、まだ制御できてないんだ。拍子抜け、する。


「想、大丈夫?」


 進化を解いた泉ちゃんが手を差し伸べる。前も、こうして手を差し伸べてくれたな……。わたしはうん、と言って、その手をつかむ。


「はい。これ」
「あ、ありがとう……!」


 それから、泉ちゃんはわたしの落ちたデジヴァイスを渡してくれた。
 ハクジャモン、これ取り忘れたのか。取れる時間がなかったのかも、とも言えるけども……なんか微妙に抜けてるな。


「もう、肝心なときに転ぶなんて! ……でも、助けようとしてくれて、ありがとう!」
「え、えへへ……」


 ど、どうしよう。いつも泉ちゃん泉ちゃん騒いでる純平さんの気持ちが分かったような気がする。わたしはそんな泉ちゃんを見ていたら、もっと泉ちゃんと仲良くなりたいと思った。


「ハクジャモン……想を誘拐する、なんてひどいことするわね!」
「ほんとだよな、ったくよぉ!」
「誘拐じゃないよ……!」


 泉ちゃんと拓也くんはそう言った……けど、だから違うってば!
 皆はえ? と意外そうな顔でわたしを見る。


「トーカンモンにデジヴァイス取られて、追ってたらハクジャモンと出会って、成り行き上一緒に皆のとこに戻ってきたの。っていうか……勝手に行って、ごめんね」


 誤解させてしまったわたしも悪かった。わざわざ皆が心配してくれてる、だから迷惑かけちゃいけない。


「輝二はんが想はんが誘拐された、と騒ぐからのう……勘違いしとったわ」
「え」
「い、いや、アレは……」


 輝二くんを見れば、何かうろたえている。何でそんなヘンな勘違いしちゃったの、輝二くん!
 純平さんは、「お前本当想ちゃんのことばっかだな」と言った。ちがう、多分輝二くんはわたしがどんくさいから気にかけてくれてるだけだ。
 輝二くんがこうして気にかけてくれてるのは嬉しい。けど、どうしてわたしなんかに――と思ってしまうのも事実だ。


「……とにかく、トーカンモンたちを追うぞ」


 輝二くんが、走りだす。トーカンモンたちはもう逃げてしまった。わたしたちは、トーカンモンを追って走りだすのだった。

110822
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